6月29日妥当レンジ 23,100円~25,000円
貿易摩擦の深刻化を懸念する動き

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米国の中国製品に対する関税適用の発動を控え重い展開>

■6日に中国製品に対する米国の制裁関税を控えて市場の警戒モードが続いている。米国は総額500億ドル相当の中国製品に25%の関税を課すとして、その内340億ドル相当分を6日より発動する予定。これに対して中国政府は直ちに対抗処置を講じると述べているが、トランプ大統領は中国が対抗処置を行った場合は追加で2,000億ドル相当の中国製品に10%の関税報復を行うと述べている(これにも対抗するならさらに2,000億ドルを課税対象にすると警告)。水面下で進められている米中交渉が決裂するとなると市場は一気に警戒モードから危機モードに傾く可能性があり予断を許さない。
■また、米国はイラン制裁の一環として世界各国にイラン産原油の輸入を11月4日までにゼロにすることを求めており、「適用除外は無い」としている。原油価格の上昇が懸念されるほか、中国が米国に真っ向から反対する可能性もあり、こちらも貿易戦争を深刻化する要因になりそうだ。
■今週は、ISM製造業景況指数(2日)、ADP雇用統計・ISM非製造業景況指数(5日)、米雇用統計(6日)など米国経済指標の発表が集中する。既に発表になった6月のISM製造業景況指数は市場予想を大きく上回り60.2となった。他の指標も堅調な内容が期待されるが、貿易摩擦が深刻化する中では株価へのポジティブ・インパクトは限定されると考える。

<アナリスト予想は1Q決算を控えてやや閑散状態>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は今期・来期ベースはプラス、再来期ベースはマイナスであった。コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、サンプルが大きく減少する中で50%を上回る程度の水準に低下。次週以降を注視したい。
■米国経済指標の好調から為替はやや円安気味で推移する中でも輸出関連は手がけ難い。高バリュエーションの中小型株は弱含み状態が続いており買い難い展開であるが、押し目は注意深く探してゆきたいと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,100円~25,000 (前回23,200円~25,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月29日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月29日)

今期予想EPS 1374.56 (前週 1374.44円)
来期予想EPS 1584.90 (前週 1583.87円)
再来期予想EPS 1631.31 (前週 1631.78円)
今期予想PER 16.23 (前週 16.38倍)
来期予想PER 14.07 (前週 14.22倍)
再来期予想PER 13.67 (前週 13.80倍)
来期予想PBR 1.15 (前週 1.16倍)
来期予想ROE 8.18% 前週 8.16%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.83% (前週 7.79%)

6月29日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出






図1
1Q
決算を控えて動きのない状態に。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.6%→56.8%→51.2%→60.652.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.4%→60.456.7%→59.8%→53.4%。
日銀短観は悪化しているが・・・・。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。