6月22日妥当レンジ 23,200円~25,100円
貿易摩擦の尖端化に揺らぐ市場

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<中国は景気配慮に経済政策をシフト>

■欧州委員会は、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入制限への対応処置として、22日から28億ユーロ規模の報復関税を米国からの輸入品に発動。さらにWTOの認定を待って36億ユーロ規模に関税を行う予定である。
■トランプ大統領は、「EUが米国に課す関税や貿易障壁を取り除かなければ、米国への輸入車全てに20%の関税をかける」とツイッターで発言(22日)。
■24日付の米WSJ誌は、トランプ政権は中国系企業を対象に対米投資への制限を検討すると同時に、ITなど先端技術の中国への流出を規制すると報じた。
■尖端化する貿易摩擦に対して市場センチメントは大きくリスクオフに傾いており、市場の混乱が収束する糸口がまだ見えてこない。
■24日に中国人民銀行は預金準備率を0.5%下げると発表。銀行の手元資金を厚くして中小企業融資などを増やすと同時に、大手銀行に対しては債務の株式化に回すように求めた。米中貿易摩擦を視野に景気配慮型に経済政策をシフトさせてきたと見られる。

<アナリスト予想は堅調にプラス推移>

■「IFIS/TIWコンセンサス225」は全期間で前週比プラス。コンセンサスDI(前週比プラス企業とマイナス企業の比率)は、サンプルが減少したものの来期予想ベースで60%台と好調。アナリスト予想に対して楽観的との見方もあるが、現時点では企業業績が悪化する気配は少なそうだ。
■日本株は割安感が強く、下押し圧力が強い環境下でも底堅い展開。ただし、高バリュエーションの中小型株などリスク回避から目先売られやすい展開か。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

23,200円~25,100 (前回23,600円~25,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月22日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月22日)

今期予想EPS 1374.44 (前週 1373.46円)
来期予想EPS 1583.87 (前週 1582.28円)
再来期予想EPS 1631.78 (前週 1629.25円)
今期予想PER 16.38 (前週 16.64倍)
来期予想PER 14.22 (前週 14.44倍)
再来期予想PER 13.80 (前週 14.03倍)
来期予想PBR 1.16 (前週 1.19倍)
来期予想ROE 8.16% 前週 8.23%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.79% (前週 7.80%)

6月22日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出





図1
コンセンサス予想
EPSのトレンドは意外と強い。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 54.1%→53.6%→56.8%→51.2%→60.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.451.4%→60.456.7%→59.8%。
コンセンサスDIは確り。業績悪化懸念は未だ無い。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。