3月30日妥当レンジ 21,600円~23,350円
再び貿易戦争への懸念、足もと景気は一時的に踊り場へ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<韓国が米国の要求を呑む、中国は対抗処置を発動へ>

■3月27日に米韓FTAが大筋合意した。米国製自動車の輸出に対する非関税障壁を下げること、米国への鉄鋼輸出に関しては関税対象から除外する代わりに輸入量にキャップをかけた。さらには通貨安誘導を禁じる「為替条項」の導入で合意した。
■一方、中国は4月2日に、米国への報復関税を発動。128品目に対して最大25%の関税を適用する。ただし、中国世論への配慮や水面化での交渉を優位に進めようとの思惑からか、大豆や航空機といった重要品目は含まれない。今後は、米国が中国の知的財産侵害に対する制裁処置を取るかどうかが焦点になるが、米中間選挙前に実績を掲げようとするトランプ大統領は(少なくとも表面的には)強硬姿勢を堅持しそうである。
■4月17~18日に米フロリダ州において日米首脳会談が予定されている。北朝鮮問題のほか「相互的な貿易及び投資を巡る関係」が議題として取り上げられることがホワイトハウスから発表された。また、3月30日に米通商代表部(USTR)は2018年版の貿易障壁報告書を公表した。日本に対しては、ジャガイモ、牛肉、羊肉に市場開放を求めるとともに、米国製自動車に対する非関税障壁を問題視している。
■貿易問題に加えて、足元の経済指標はやや踊り場の様相を示している。日銀短観(3月)の大企業製造業の業況判断DIは8四半期ぶりに低下、米ISM製造業景気指数(3月)も新規受注が昨年8月以来の低水準となった。今週末(6日)には、米雇用統計(3月)の発表を控えるが、貿易問題の足かせが大きいことや、金利上昇に対する懸念等から。市場予想を上回っても好反応にはなりにくいと思われる。
 

<IFIS/TIWコンセンサス225:来期・再来期は再びマイナスに>

■3月30日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期・再来期ベースが再び前週比マイナスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)も、来期ベースで再び50%を割れた。日銀短観の業況判断DIが示すように、足もと景気は踊り場、企業経営者のマインドは慎重になっていると考えられ、(少なくとも)決算発表を経過するまでは上値を追う展開は期待し難いと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,600円~23,350 (前回21,200円~22,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月30日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月30日)

今期予想EPS 1327.77 (前週 1321.95円)
来期予想EPS 1392.46 (前週 1393.77円)
再来期予想EPS 1579.91 (前週 1581.91円)
今期予想PER 16.16 (前週 15.60倍)
来期予想PER 15.41 (前週 14.79倍)
再来期予想PER 13.58 (前週 13.03倍)
来期予想PBR 1.13 (前週 1.09倍)
来期予想ROE 7.34% 前週 7.39%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.04% (前週 7.18%)

3月30日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出




図1先週末の日経平均株価は妥当レンジ下限付近まで回復したが、割安感は依然として強い。ただし、コンセンサス予想が慎重な方向に修正されており、上値を積極的に追う局面ではないと考える。

 


図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 53.5%→38.346.853.2%→44.8
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.7%→42.545.959.1%→51.2%。
来期ベースでは再び50%割れに。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。