3月16日妥当レンジ 21,750円~23,500円
米FOMCは要警戒、ドットチャート次第で円高加速も

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日米ともに政治リスクに揺れる>

■米国においてはティラーソン国務長官の解任(13日)が発表されたことに加えて、マクマスター大統領補佐官の解任説も浮上に。トランプ大統領周辺とロシアとの不適切な関係疑惑「ロシアゲート」の捜査も緊迫化を増している(15日:NYタイムズ報道)。また、フェイスブックの個人データ5000万人分が流出し、米大統領選でトランプ大統領に優位に働くように活用されたとの疑惑も生じている。
■日本では森友学園を巡る決済書の書き換え問題から国会が紛糾、報道各社の調査による内閣支持率は軒並み10ポイント低下して30%台となっている。
■20-21日に予定されている米FOMCでは、利上げが確実視される中で、ドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利見通し)で利上げ見通しが年3回から年4回に引き上げられるかに注目が集まる。仮に年3回で変更がなかったとしてもメンバーの経済見通しが上方修正されれば6月以降の引上げ市場は織り込む可能性がある。

<IFIS/TIWコンセンサス225:来期・再来期で前週比マイナス>

■3月16日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は来期・再来期ベースで僅かながら前週比マイナスとなった。自動車、機械、電機(部品)などの企業で小幅であるがマイナスが多く見受けられた。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)も、来期・再来期ともに中立水準である50を2週連続で下回った。“避難準備”レベルと言っておこう。
■森友問題での安倍政権の弱体化は、トランプ大統領が日本にも強い通商要求を提示してくる可能性がある中で、リスク要因である。目先的にも米FOMCのドットチャート次第で米国株式市場が下落するようであれば、円高・株安となって日本はより強い影響を受ける可能性が大きい。
■日経平均株価など大型株はバリュエーション面での割安感が強いことから比較的ダウンサイド・リスクは小さいと思われるが、これまで積極的に買われてきた中小型株は試練の時間を迎えるかもしれない。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,750円~23,500 (前回21,600円~23,350円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月16日)

今期予想EPS 1324.89 (前週 1321.32円)
来期予想EPS 1391.53 (前週 1392.16円)
再来期予想EPS 1578.16 (前週 1579.36円)
今期予想PER 16.36 (前週 16.25倍)
来期予想PER 15.58 (前週 15.42倍)
再来期予想PER 13.74 (前週 13.59倍)
来期予想PBR 1.14 (前週 1.13倍)
来期予想ROE 7.32% 前週 7.34%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.02% (前週 7.04%)

3月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1日経平均株価は割安感が強いことからダウンサイド・リスクはそれほど高くはないと思われるが、来期業績の伸び悩みから、米金利、米通商政策、森友問題等のリスクが存在する内は上昇期待は強く持ち難い。


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.9%→57.5%→53.5%→38.346.8
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.357.1%→54.7%→42.545.9
2週連続で50割れ! 警戒レベルを上げる必要があるかもしれない


 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。