3月9日妥当レンジ 21,600円~23,350円
「コンセンサスDI」が急低下、為替動向に要注意!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<市場リスクは一旦後退したが>

■米国の輸入関税適用による保護主義台頭への懸念の後退、2日の黒田発言「2019年ごろ出口を検討するのは間違いない」の打ち消し、南北首脳会談・米朝首脳会談実現の可能性による北朝鮮状勢の危機回避期待など、市場リスクは低下したように見える。
■9日発表の2月の米雇用統計において平均時給も前年比+2.6%と前月(+2.8%)から低下し、インフレ懸念も和らいだ。
■20-21日の米FOMCでの利上げは織り込まれたと考えられるが、ドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利見通し)で利上げ見通しが年3回から年4回に引き上げられるかに注目が集まる。市場リスクの拡大から再度、円高方向に振れる可能性には注意が必要と思われる。
■今週は、2月の米消費者物価指数(13日)、米小売売上高(14日)に注目が集まるだろう。

< IFIS/TIWコンセンサス225は、全期間プラスであるが>

■3月9日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は全期間で前週比プラスとなった。しかし、「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業数の比率)は、来期・再来期ともに中立水準である50を大きく下回った。50を下回るのは、来期ベースでは45週ぶり、再来期ベースでも34週ぶりとなる。まだ、1週間分のデータだけなのでなんとも言い難いが“警戒”レベルに発展する可能性もあるだろう。
■来期ベースの予想EPS増益率は、1/12時点の+12.8%→2/9時点では+7.9%→3/9時点では+5.4%、とこちらも急低下している。今期予想EPSが上乗せされる中で、為替の円高を視野に来期予想EPSが伸び悩んでいることが背景と考えられる。
■目先は株価は戻り基調にあり、依然として強い割安感がある水準にあるものの、予想増益率の低下が続くなら、バリュエーションが切り下がることが懸念される。特に影響の強い為替動向には再び注視する必要がありそうである。日本円の先高感が強く残る状況では、昨年の4月から8月に見られたように割安感が強いが上値は重い、という展開も考えられる。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

21,660円~23,350 (前回21,550円~23,250円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月9日)

今期予想EPS 1321.32 (前週 1316.97円)
来期予想EPS 1392.16 (前週 1390.82円)
再来期予想EPS 1579.36 (前週 1576.94円)
今期予想PER 16.25 (前週 16.08倍)
来期予想PER 15.42 (前週 15.23倍)
再来期予想PER 13.59 (前週 13.43倍)
来期予想PBR 1.13 (前週 1.13倍)
来期予想ROE 7.34% 前週 7.43%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.08% (前週 7.17%)

3月9日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



TIW1現在の株価水準には割安感はある。しかし、円高等の要因によって来期の予想EPSの伸び悩み状態が生じており、妥当レンジそのものが上方に回帰する可能性がやや弱まっている。

 

TIW2来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.5%→57.9%→57.5%→53.5%→38.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、57.4%→60.3%57.1%→54.7%→42.5%。
来期ベースは38.3%と急低下。警戒的に注視する必要アリ!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。