10月6日妥当レンジ 20,900円~22,600円
国際イベントが多いが、ポジティブ・スタンスが基本

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米雇用統計は雇用者数減少ながらも評価はポジティブ>

■4日発表の米ISM非製造業景気指数(9月)は59.8と8月(55.3)から大幅に上昇し、2005年8月以来の水準であった。6日発表の米雇用統計(9月)は、非農業部門雇用者数がハリケーンの影響から前月比3.3万人減(市場予想は8万人増)となったものの、失業率は4.2%(8月4.4%)と低下。平均時給も前年同期比(年率)+2.9%と8月の+2.5%から大きく加速した。米国経済の好調が確認されるとともに、長期国債利回りは強含みとなり、12月利上げへの期待が強まっている。
■今週は、G20財務相・中央銀行総裁会合(12-13日)、IMF・世銀年次総会(13-15日)など国際会議に加えて、NAFTA再交渉会合(11-14日)、中国第18期中央委員会第7回全体会議(11日)も開催される。FOMC議事録要旨(11日)、米小売売上高・消費者物価(13日)も材料視されよう。基本的には世界経済の好調を受けてポジティブなトレンドが継続すると考える。特に目だった不安材料はないものの、暫く息を潜めている北朝鮮の突発的な動きには引き続き警戒が必要と思われる。
■国内では本日(10日)に、22日投開票の衆議院選挙が公示された。「希望の党」に対する瞬間的な高揚感は減衰しており、与党(自民・公明を合わせて)が過半数を割り込むような展開は現時点では想定されていない。マーケットへの影響は限定されると考える。

 

<コンセンサスEPSは実質プラス継続>

■10月6日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間で前週比マイナスとなった。しかしながら、これは2日の日経平均株価の採用銘柄の入替の影響によるものであり(各期間で4.1~4.6円のマイナス影響)、実質的には前週比プラス。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)も、サンプル数が少ないながら全期間で50(中立水準)を上回る水準を維持している。
■株価水準は、漸くTIWが算出している妥当レンジの下限に届こうとする水準。地政学リスクが再び台頭しない限り、騰勢はまだ続くとみる。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,900円~22,600 (前回21,100円~22,800円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月6日)

今期予想EPS 1162.66 (前週 1164.81円)
来期予想EPS 1285.40 (前週 1288.82円)
再来期予想EPS 1429.83 (前週 1433.01円)
今期予想PER 17.80 (前週 17.48倍)
来期予想PER 16.10 (前週 15.79倍)
再来期予想PER 14.47 (前週 14.21倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.22倍)
来期予想ROE 7.52% 前週 7.71%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.07% (前週 7.24%)

10月6日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出




図1102日の日経平均株価の採用銘柄入替によって、コンセンサス予想EPSへの影響は、今期(▲4.41円)、来期(▲4.62円)、再来期(▲4.41円)であった。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 55.4%→50.0%→64.061.761.0
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.551.5%→57.1%→52.8%→65.3
サンプル数は少ないが、来期ベースは3週連続60%台を継続!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。