9月1日妥当レンジ 20,700円~22,350円
北朝鮮リスクの上昇に積極的な買い手不在の状況
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<上値を追えない状況から、下落は不可避か>
■30日に発表された8月のADP雇用統計が強い数値であったことから、1日発表の米雇用統計(8月)に期待が集まったが、非農業部門雇用者数は前月比15.6万人増と市場予想(18万人増)を下回り、平均時給も前期比+2.5%とやや期待はずれな内容であった。ただし、同時に発表されたISM製造業景況指数(8月)が58.8と前月比2.5ポイント上昇し、2011年4月以来の高水準となったことから、市場はドル高・NY株高と好感した。しかし、3日に北朝鮮が6回目の核実験を実施し、ICBM用の水爆と発表したことから一気に地政学リスクが高まり、特に日本株に関しては軟調な展開となっている。
■今週は、6日に米ベージュブックの発表、7日にECB理事会が予定されている。特に、ECB理事会では前回(7/20)にドラギ総裁が「今秋に12月以降の金融政策についての議論する」と述べたことからテーパリング開始時期について注目が集まるものと考えられる。
■8月25日に米南部に上陸した大型ハリケーン「ハービー」の被害総額は、2005年の「カトリーナ」を上回ると予測されており、南部に留まらず全米に亙って影響が続くと見られている。9月以降の米経済統計への波及が懸念される。日本も関東地方以北での長雨・冷夏の影響から8月の経済統計は期待できない状況にある。そのため地政学リスクを打ち消すようなプラス材料が見込みにくい状況にある。しかし、米国では「ハービー」による被害が甚大であることから、懸念されている債務上限の引上げに関して、与野党の協議が前進する可能性が指摘されている。
■9日に北朝鮮の建国記念日を控えて、地政学リスクに予断を許さない状況が続く。積極的な投資家が不在の中で、下落圧力に対して抵抗力のない状況が今週は続きそうである。
<「コンセンサスDI」は堅調>
■9月1日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・来期ベースにおいてマイナス。コンセンサスDI(=予想EPSの前週比プラス比率)は前週よりは低下したものの、5週連続で全期間50を上回って推移している。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,700円~22,350円 | (前回20,550円~22,200円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月1日)
今期予想EPS | 1161.22円 | (前週 1164.77円) |
来期予想EPS | 1281.97円 | (前週 1283.98円) |
再来期予想EPS | 1422.76円 | (前週 1405.09円) |
今期予想PER | 16.96倍 | (前週 16.70倍) |
来期予想PER | 15.36倍 | (前週 15.15倍) |
再来期予想PER | 13.84倍 | (前週 13.84倍) |
来期予想PBR | 1.18倍 | (前週 1.17倍) |
来期予想ROE | 7.68% | (前週 7.72%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.34% | (前週 7.37%) |
9月1日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
5月からの妥当レンジ下限を下回る状態の継続は、
1)地政学リスク(北朝鮮)⇒ 円高と株安
2)米国利上げペースが緩慢になるとの市場の見通し⇒円高
が強く影響しているものと考えている。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 57.8%→57.2%→65.9%→58.2%→54.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、58.6%→61.7%→55.2%→59.9%→52.5%。
安定的に50%超をキープ。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |