7月21日妥当レンジ 20,800円~22,500円
ドル安がやや重石に、翌週の米経済統計を待つ展開か?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日本経済は徐々に良化しつつあるが>

■24日の東京為替市場では110円台/ドルにまで円高が進んだ。米政権への不信が高まっていることや、秋口にも資産縮小開始が見込まれることで米利上げが困難になるという見立てである。米10年国債利回りも低下傾向が続いている。
■日本も加計問題から安倍政権への支持率が急速に低下しており、都議会選挙に続いて、23日の仙台市長選挙でも民進党などが推す候補者に敗退した。日米の政権基盤の弱体化が当面は大きなマイナス要素となりそうである。
■国内経済は、貿易統計(6月分・20日発表)は輸出・輸入ともに数量ベースで増加、20日の日銀政策決定会合において17年度、18年度の実質GDP予想が上方修正された。24日公表のIMF世界経済見通しにおいても、17年の日本成長率は上方修正されている。消費者物価の上昇は緩慢ながらも(日銀は2%達成時期を19年度頃に先送り)、明るさが増しつつある。堅調さが予想される3月期決算企業の1Q決算発表が株価の下支えとなる中で、翌週の米国経済指標発表を待つ膠着した展開を予想する。
■今週は25-26日に米FOMCが予定されているが、現状維持がコンセンサス。資産縮小の開始時期に関するメッセージが出されるかどうかが注目点。28日に国内主要経済指標(消費者物価・家計調査・有効求人倍率等)が発表予定であるが、マーケットへの影響は限定的と考えられる。
■米国経済指標は、28日の4-6月期の実質GDP(速報)、ISM製造業景気指数(1日)、ADP雇用統計(2日)、ISM非製造業景況指数(3日)、米雇用統計(4日)と続く。コンセンサスを下回らない限り、市場はポジティブに受け止めると考える。

<コンセンサス予想は引き続きやや上向き方向>
■7月21日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、(前週比で変化した)サンプル数が少ないものの全期間でコンセンサス予想EPSがプラスであった。企業業績からみて日本株の割安感は強まりつつあり、市場センチメントの回復が待たれるところ。引き続き強気のポジションで。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,800円~22,500 (前回20,750円~22,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月21日)

今期予想EPS 1143.01 (前週 1141.44円)
来期予想EPS 1265.78 (前週 1262.50円)
再来期予想EPS 1371.58 (前週 1367.60円)
今期予想PER 17.58 (前週 17.63倍)
来期予想PER 15.88 (前週 15.94倍)
再来期予想PER 14.65 (前週 14.71倍)
来期予想PBR 1.23 (前週 1.23倍)
来期予想ROE 7.73% 前週 7.71%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.24% (前週 7.20%)

7月21日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出


図1米政権の混迷と、FRBのテーパリングの9月開始の見通しによる利上げ見通し後退からドル安(円高)から上値の重い展開に


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.8%→52.3%→50.5%→57.0%→55.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.1%→51.9%→58.6%→46.6%→54.9%。
決算前でサンプル数が少ないものの、安定的に推移

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。