6月16日妥当レンジ 20,450円~22,100円
積極スタンス&輸出関連ウエイト増に転換せよ!

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米FOMCは予想よりも“タカ派”? >

■14日の米FOMCにおいて事前予想通りに0.25%の利上げが決定された。ドットチャート(政策金利見通し)は、3月時点の予想をほぼ踏襲する形で、年内もう1回、18年、19年にそれぞれ3回の利上げを見込んでいる。注目されたのはテーパリング(資産縮小)の基本計画が公表されたことである。満期を迎えた債券への再投資を減額することで緩やかに資産を圧縮する。米国債60億ドル/月、住宅担保証券(MBS)40億ドル/月でスタートし、3ヵ月毎に上限を引き上げて、1年後には米国債300億ドル/月、MBS200億ドル/月とする計画。9月は利上げでなく、資産縮小のスタートが先行するという見方もある。
■14日は、5月の米小売売上高、消費者物価指数が芳しくなかったことから、為替は瞬間的に109円/ドルを割り込むところまで円高が進んだが、FOMC後は111円台に水準を戻している。消費の不振は、昨年11-12月の急激なドル高の影響や税還付の遅れによるもので、一過性のものとの見方もある。しかしながら、米長期債利回りを見る限りではマーケットはまだ米経済の停滞からの脱却には半信半疑の状態と思われる。利上げにしろ、テーパリング開始にしろ、ドル高(円安)要因となるだけに、日本経済及び日本株にとって追い風となる。
■15日のユーロ圏財務相会合でギリシャへの融資再開が決定され、18日のフランス下院選挙ではマクロン大統領の率いる「共和国前進」が6割という圧倒的議席を獲得した。独仏を枢軸としたEUの再強化が図られると推察され、欧州の懸念も後退した。14日に発表された中国の5月の統計(小売売上高・鉱工業生産・固定資産投資)も確りしている。不安材料が薄らぐ中で株式市場には強い上昇トレンドの発生が期待できる。
■今週は主要な経済指標の発表はないものの、中古住宅販売件数(5月分・21日)、景気先行指数(5月・22日)、新築住宅販売件数( 5月分・23日)など米国統計には反応し易い展開が予想される。また、FRB関係者の講演も20日から23日かけていくつも予定されている。
■これまで内需関連・中小型を主軸にと主張して来たが、緩やかな円安の可能性も意識し、積極的な株式ポジションの増加と輸出株ウエイトを高めてゆくタイミングと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

20,450円~22,100 (前回20,400円~22,050円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月16日)

今期予想EPS 1141.11 (前週 1136.82円)
来期予想EPS 1257.49 (前週 1252.67円)
再来期予想EPS 1363.56 (前週 1363.41円)
今期予想PER 17.48 (前週 17.60倍)
来期予想PER 15.86 (前週 15.98倍)
再来期予想PER 14.63 (前週 14.68倍)
来期予想PBR 1.21 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.63% 前週 7.57%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.17% (前週 7.13%)

6月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出


図1テーパーリングの具体的な概要が示されたほか、ドットチャートも3月時点の予想がほぼ踏襲され、FRBは思ったよりタカ派姿勢。今後、発表になる米国統計がFRBのスタンスを後押しするようであれば、円安=株高の展開が期待される。


 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.0%→50.3%→52.0%→53.1%→51.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、56.8%→47.9%→50.7%→47.1%→48.1%。
再来期ベースは2週連続の50を下回った。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。