4月28日妥当レンジ 19,400円~20,950円
対象決算期移行で割安感強まるが、GWの円高に注意

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<日欧の金融政策に変更なし>

■4月26-27日の日銀金融政策決定会合では市場の予想通り現状維持となった。ただし、同時に公表された「展望レポート」においては、景気判断が「穏やかな回復基調を続けている」から「穏やかな拡大に転じつつある」へと上昇修正された。「拡大」という表現は2008年3月以来8年ぶりである。
■しかし、28日発表の3月の各種掲載指標は、有効求人倍率が1990年11月以来となる1.45倍に上昇したものの、家計調査(2人以上世帯の消費支出)、全国消費者物価、鉱工業生産ともに奮わなかった。
■27日のECB理事会においても現状据え置きとなった。「景気回復の裾野は広がっているものの、多くの脆弱性を有している」と明るさを増す中でも慎重なスタンスを堅持した。
■28日発表の米国GDP(1-3月)速報値は、前期比+0.7%と低水準となった。個人消費が伸びず、企業在庫の減少が影響した。ただし、第1四半期に特有の季節調整値の問題と、天候要因によるものであり、一時的との見方も強い。今週は、ISM製造業景況指数(1日)、米FOMC(2-3日)、ISM非製造業景況指数(3日)、米雇用統計(5日)が予定されている。
■29日に北朝鮮は弾道ミサイルを発射したものの、失敗に終わった模様である。米国は原子力空母カールビンソンを朝鮮半島に派遣し、韓国と合同演習に入った。米国から引き金を弾くことはないと見られているものの、緊迫した状態が続く。

 

<コンセンサス予想:対象決算期移行から大幅増>

■4月28日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、本格化した3月期決算発表によって対象決算期が移行し、各期間ともに大幅なプラスとなっている。その結果、日経平均株価の妥当レンジは大きく上方シフトし、現株価水準の割安感が顕著となっている。
■中期的には日本株の割安感に注目が集まると予想するが、今週は、5日に延長された米暫定予算の期限切れが訪れること、日本市場がGWとなるタイミングは円高に振れやすいことには注意が必要だろう。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,400円~20,950 (前回18,650円~20,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月28日)

今期予想EPS 1116.66 (前週 1058.32円)
来期予想EPS 1193.01 (前週 1166.83円)
再来期予想EPS 1298.63 (前週 1271.17円)
今期予想PER 17.19 (前週 17.59倍)
来期予想PER 16.09 (前週 15.96倍)
再来期予想PER 14.78 (前週 14.65倍)
来期予想PBR 1.20 (前週 1.17倍)
来期予想ROE 7.44% 前週 7.35%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.06% (前週 7.01%)

*4月28日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
対象決算期の移行に伴うコンセンサス予想EPSの増加から妥当レンジは大きく切り上がっている。妥当レンジは201557月の水準にあり、市場リスクが後退するタイミングで日経平均2万円奪回が生じると考える。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 63.8%→48.5%→45.5%→57.1%→64.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.5%→44.8%→52.4%→55.3%→61.9%。

対象決算期移行で高水準なプラス比率が向こう2週間は見込まれる。最終的に来期予想ベースのEPSで1,270円前後が伺えるかどうかが目先のポイント。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。