3月24日妥当レンジ 19,000円~20,550円
米国債利回りの低下も底に近づき、円高も一服へ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<新たなリスク顕在化が無い限り、円高は一服と見る>

■オバマケア(医療保険制度改革法)の撤廃を目指した代替法案が撤回された(24日)。これにより、トランプ大統領の政策実行力に疑問符が拡大し、米国債利回りの低下とドル円の下落(ドル安)が進行している。やや割高感があったNY株価の下落が相まって、日本株も日経平均株価が27日には19,000円を割れる展開となった。
■米国の来年度予算に関しては、トランプ大統領が3月16日に概略を述べたもの、通常は2月中に提出される予算教書は5月まで待たねばならず、予算執行の大幅な遅れから減税案や公共投資の実効性が懸念されている。こうした状況を背景に、米国債利回り(10年国債)は、FOMCでの利上げ直前の3月14日をピーク(2.62%台)に27日は2.35%台にまで下落。年初からの最低水準(2月下旬の2.31%台)に近づきつつある。ただし、フランス大統領選等でリスクオフの流れがさらに加速するようでなければ、米金利も為替も一旦下げ止まりと考える。
■フランス大統領選では、反EUの国民戦線のルペン候補と中道系のマクロン候補がほぼ同水準で支持を集めている。この二人で決選投票となればマクロン候補が勝利するとの見方が目下のコンセンサスである。注意すべきは4月23日の初回投票日の直前(20日)に行われるテレビ討論会。
■今週は、29日に英国がEU離脱を通告する他、31日に国内経済指標の発表が集中するが、大きなイベントはない。市場は下落からの自立反発が期待されるものの、上値の重い展開が予想される。

 

<コンセンサス予想(来期ベース)は、21週連続前週比プラス>
■3月24日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期ベースが前週比マイナスとなるものの、来期・再来期ベースは引き続きプラスであった。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も来期・再来期ベースともに50%超の高水準を維持。
■24日時点では、12ヵ月フォワードベースの予想EPSからの日経平均株価の妥当レンジは、19,950~21,590円とやや低下したものの、現株価水準を大きく上回る。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,000円~20,550円 (前回19,150円~20,700円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月24日)

今期予想EPS 1058.44 (前週 1060.32円)
来期予想EPS 1164.37 (前週 1162.49円)
再来期予想EPS 1271.80 (前週 1271.24円)
今期予想PER 18.20 (前週 18.41倍)
来期予想PER 16.54 (前週 16.79倍)
再来期予想PER 15.15 (前週 15.36倍)
来期予想PBR 1.22 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.37% 前週 7.37%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.91% (前週 6.88%)

*3月24 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
株価は妥当レンジ下限に近づきつつあり、反転後の上昇ポテンシャルは大きいと考える。

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 59.9%→64.9%→60.2%→59.5%→60.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.4%→55.5%→59.2%→57.8%→58.4%。

引き続きプラストレンド(50%超)を維持!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。