3月10日妥当レンジ 19,200円~20,750円
最近の市場はリスクイベント通過後に急騰のパターン

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<繰り返しであるが、日経平均2万円は切っ掛け待ち>

■10日発表の2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が23.5万人増、失業率低下(4.8%→4.7%)と極めて好調な内容であった。それにもかかわらず、週明けの日本株がやや冴えないのは、1)ADP雇用統計(8日)で既に好調が織り込まれていた、2)9日のECB理事会でデフレ懸念が後退したことが確認され、為替は円安に振れていたこと。3)リスクイベントとして、 15日にオランダ総選挙、17-18日にG20財務相・中央銀行総裁会議が予定されていること、4)英国が月内にもEU離脱を正式に通知することが見込まれること、などが挙げられる。
■もちろん、こうしたリスクイベントで市場が懸念するような材料(例えば、通貨安批判や貿易赤字の問題、地政学的リスク等)が現出する可能性はあるものの、無難に通過すれば頭を押さえつけられていたマーケットは急騰する。時間的には停滞している局面が長くても、結果的にはマーケットは上昇基調を描いている、というのが昨年来何度も見られた構図である。
■14-15日の米FOMCでの利上げが確実視されることに加えて、ECBの緩和姿勢にも変化が出てきている。「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる処置を利用する」という一文が緊急性がなくなったとして削除されたことは注目に値する。

 

<コンセンサス予想(来期ベース)は、19週連続前週比プラス>
■3月10日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、引き続き全期間において前週比でプラスであった(全期間プラスは6週連続、来期ベースは19週連続)。「225コンセンサスDI」(前週比プラスとなった銘柄数の比率)も来期・再来期ベースともに50%超の高水準を維持している。
■10日時点では、12ヵ月フォワードベースの予想EPSからの日経平均株価の妥当レンジは、20,110~21,780円と上方シフトが続く。下限が20,000円を超えてきており、株価急騰のマグマが溜りつつあると考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,200円~20,750円 (前回19,050円~20,600円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(3月10日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(3月10日)

今期予想EPS 1056.53 (前週 1053.59円)
来期予想EPS 1159.30 (前週 1155.33円)
再来期予想EPS 1268.52 (前週 1262.09円)
今期予想PER 18.56 (前週 18.48倍)
来期予想PER 16.91 (前週 16.85倍)
再来期予想PER 15.45 (前週 15.43倍)
来期予想PBR 1.25 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.38% 前週 7.35%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.85% (前週 6.85%)

*3月10 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出



図1
妥当レンジは上方にシフト。2015年の高値時に迫る

 


図2
来期予想ベースのプラス企業比率は、 58.7%→62.1%→59.9%→64.9%→60.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、67.6%→55.9%→62.4%→55.5%→59.2%。

引き続きプラストレンド(50%超)を維持!

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 図312ヵ月フォワードの予想EPSでは2015年高値時を大きく上回る。
予想PER2015
年時点と相対的には割安感がある

 

 

図4(日経平均÷日経ジャスダック平均の目盛りは逆表示である点に注意)
日経ジャスダック平均の日経平均に対する相対的ポジションは高値警戒水準に迫る。
日経平均が割安? それともジャスダック平均が割高?

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。