12月9日妥当レンジ 18,450円~19,950円
企業業績見通しの上昇トレンドから底堅い展開を予想

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米FOMCで一旦材料出尽くしも、企業業績見通しが支える>

■ECB理事会(8日)において、来年4月から2017年末までの債券買入れの延長が決定された一方で、月額800億ユーロの買入れ額は600億ユーロに縮小された。しかし、ドラギ総裁が記者会見で2017年末以降も買入れを継続する可能性があること、状況によっては800億ユーロに戻ることも示唆したことからテーパーリング(金融緩和縮小)の懸念は否定され、市場はポジティブに反応している。
■11日のOPEC加盟国とロシアやメキシコなど非加盟の産油国との会合があり、非加盟国も減産に協調することで合意がなされた。
■11月の中国貿易統計(8日発表)において市場予想に反して輸出・輸入ともにプラスに転じた。鉄鉱石、原油、石炭、銅などの輸入が数量ベースで増加しており、中国経済の持ち直し傾向がうかがえる。
■世界的な経済状況に関する懸案が薄れる中で、円安を背景に日本株が好調であるが、日本企業の業績見通し(アナリストコンセンサス)の上向き傾向が続いていることに着目したい。日経平均株価の予想PER(12ヵ月フォワード)が18倍に達し、株価下落前の昨年11月の水準に近づいているが、前年は予想EPSが減少トレンドにあったが、現在は増加トレンドにあり、状況は大きく異なっている。 FOMCでの利上げ決定によって一旦材料出つくしとなっても底堅い展開を予想する。東証1部に比べてJASDAQの出遅れが目立っており、中小型株に妙味がありそうである。

 

 

<コンセンサス予想は幅広い銘柄でプラスに>
■12月9日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は2週連続で全期間において前週比プラスとなった。前週比プラスとなった銘柄数の比率(「225コンセンサスDI」)は、来期・再来期ともに60%超の高水準となった。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,450円~19,950円 (前回17,950円~19,400円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月9日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月9日)

今期予想EPS 1006.49 (前週 1005.14円)
来期予想EPS 1086.53 (前週 1081.34円)
再来期予想EPS 1191.60 (前週 1183.42円)
今期予想PER 18.87 (前週 18.33倍)
来期予想PER 17.48 (前週 17.04倍)
再来期予想PER 15.94 (前週 15.57倍)
来期予想PBR 1.29 (前週 1.24倍)
来期予想ROE 7.35% 前週 7.27%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.81% (前週 6.82%)

*12月9 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

%e5%9b%b31
コンセンサス予想EPSの上昇から依然としてレンジ中位の水準。

 


%e5%9b%b32
来期予想ベースのプラス企業比率は、 46.3%→56.5%→50.8%→62.1%→64.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.4%→53.3%→48.4%→58.2%→67.7%。

来期予想ベースは60%超を維持、再来期も60%超に上昇

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

%e5%9b%b33PER水準は昨年11月水準に迫るものの、予想EPSが減少トレンドにあった前年と増加トレンドにある現在とは状況が違う。

 

%e5%9b%b34東証1部とJASDAQの配当利回りに乖離が生じ始めているのはやや気になるが(高値圏では利回り格差が拡大する)、配当利回りの水準自体は昨年11月頃と比べてかなり上にある。

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。