9月23日妥当レンジ 16,500円~17,850円
米大統領選の混迷から円高警戒感が強まるか?

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<ドットチャートの中央値が下方に大きくシフト>

■21日の日銀政策決定会合においては、1)イールドカーブ・コントロールの導入により、長短金利差を確保する、2)消費者物価上昇率が安定的に2%を超えるまで緩和を継続する、ということが確認された。同日の為替・株式市場では一時的に好感されたものの、政策は実質的に据え置かれたことから、同日夜(日本時間)の米FOMCの結果を受けて、ドル安への揺り戻しが生じている。
■米FOMCにおいては、FFレートの誘導目標レンジは据え置き。景気判断やリスク判断において上方修正がなされたものの、労働市場のスラック(緩み)が残っているとして、更なる証拠を待つことが選択された。ドットチャート(FF金利予想の中央値)は、前回(6月)と比べて下方修正された。2016年末0.875%(前回)→0.625%(今回)、2017年末1.625%→1.125%、2018年末2.375%→1.875%、長期3.000%→2.875%。2017年の利上げ回数が3回から2回に下方修正されるとともに長期のインフレ率も修正されており、目先の利上げタイミングはともかく、米国経済の潜在成長率の低下からFRBが緩和的に傾いていることが印象付けられた。11月のFOMC(11/1-2)は大統領選直前であるために12月(12/13-14)での利上げが見込まれるものの、日米金利差拡大につれて円安に向かうとのシナリオはやや描き難くなったように思われる。
■米大統領選挙は、第1回大統領候補討論会(9/26)、副大統領候補討論会(10/4)、第2回討論会(10/9)、第3回討論会(10/19)を経て、11月8日に投票が行われる。接戦が予想される中で政策討論が内向きに傾くことが懸念される。
■今週は、30日に国内経済統計が各種発表されるほか、28日にOPEC非公式会合が予定されている。

<コンセンサス予想EPSは全期間マイナス>
■9月23日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスとなった。前週は営業日が3日間であったためにサンプル数が少ないが、前週比プラスとなった銘柄の比率は、来期47.2%、再来期39.3%と大きく低下した。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,500円~17,850円 (前回16,200円~17,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月23日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月23日)

今期予想EPS 985.37 (前週 989.57円)
来期予想EPS 1061.07 (前週 1061.40円)
再来期予想EPS 1166.57 (前週 1168.07円)
今期予想PER 17.00 (前週 16.69倍)
来期予想PER 15.79 (前週 15.56倍)
再来期予想PER 14.36 (前週 14.14倍)
来期予想PBR 1.13 (前週 1.10倍)
来期予想ROE 7.13% 前週 7.05%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.95% (前週 6.91%)

*9月23 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 
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7月から妥当レンジの下限近辺で推移。割安感の残る水準であるが、FOMCのドットチャートの下方修正を受けて、米大統領選の動向によっては下振れするリスクが台頭してきた。

 

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来期予想ベースのプラス企業比率は、 54.7%→48.8%→46.1%→50.6%→47.2%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、52.6%→45.0%→47.4%→52.1%→39.3%。

サンプルが少ないものの再来期は40%割れに。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。