6月24日妥当レンジ 15,350円~16,600円
円高から株価水準は下方シフトするが、悲観は早い

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<まさかの“離脱”とその後>
■23日に投票が行われたEUからの離脱を問う英国の国民投票は、まさかの“離脱”となった。ユーロ、ポンドが売られると同時にドル、円が買われ、特に日本円は瞬間的には99円/ドル(24日)を記録した。世界的にも株価の下落が引き起こされ、日経平均株価も15,000円を割り込む展開となった。
■今回の英国の“離脱”決定とそれに伴う市場の混乱によって、米国の利上げ時期がさらにずれ込むことが予想される。米10年国債利回りは1.42%にまで低下している。そのため、ドル円のレンジは100-105円/ドルへと円高にシフトした。円高によって企業収益見通しが今後低下することを考慮するなら、株価水準も従来よりも下方シフトすることは避けられないと考えられる。しかし、100円/ドルを割り込む水準では、介入を含めた政策発動が期待されることから、現状からさらに株価が底割れしてゆく可能性は低いと考える。
■26日に行われたスペイン総選挙では、与党・国民党が勝利した。事前予想では急進左派の躍進が見込まれていたのであるが、英国の混乱を目の当たりにして、安定志向が強まったことが伺える。英国離脱決定によって、ナショナリズムの台頭とEU・ユーロの崩壊という悲観的な見方が強まったが、むしろ離脱のリスクが強く認識される結果になったと考えられる。
■英国離脱は、リスボン条約50条に基づいて正式な離脱をEUに通告しない限りは始まらない。離脱派の政治家が公約を撤回するような状況も生じており、今回の国民投票が最終決定とはならない可能性も指摘されている。悲観するにはまだ早い。

<コンセンサス予想EPSは一旦底打ちか>
■6月24日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今期・再来期はプラスであった。前週比較でプラスになる企業が増加しており、プラス企業比率は再来期では56.7%と6週間ぶりに50%を超えた。円高の影響が顕在化するのはこれからであるだけにあまり楽観はできないものの、15,000円近辺は割安感が強い。低価格の外食企業、100円ショップ、など円高・デフレ関連銘柄に注目。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,350円~16,600円 (前回15,800円~17,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月24日)

今期予想EPS 1001.55 (前週 992.02円)
来期予想EPS 1087.12 (前週 1089.43円)
再来期予想EPS 1188.95 (前週 1186.72円)
今期予想PER 14.93 (前週 15.73倍)
来期予想PER 13.75 (前週 14.32倍)
再来期予想PER 12.58 (前週 13.15倍)
来期予想PBR 0.98 (前週 1.02倍)
来期予想ROE 7.15% 前週 7.14%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.38% (前週 7.24%)

*6月24 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図124日時点の株価は、妥当レンジ下限を大きく下回った。円高が進んだことから予想EPSの弱含みトレンドが続くことも考えられる。全体的に妥当レンジの水準は一段引き下げられた印象が強い。

 

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 44.6%→43.4%→45.1%→38.7%→48.5%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.2%→48.5%→49.7%→47.5%→56.7%。

再来期予想ベースは6週ぶりに50を上回る

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。