5月6日妥当レンジ 15,650円~16,900円
6月を控えて思惑先行の展開、海外発の円高要因に注意

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<6月の米利上げ、日銀の追加緩和はあるか?>
■6日発表の米雇用統計(4月)は、非農業部門雇用者数が16.0万人増と市場予想(20.2万人増)を大きく下回ったものの、余剰労働力が減少しつつあることや、時間当たり賃金が前年比+0.25%となったことから特にネガティブサプライズとはならなかった。発表後にダドリーNY連銀総裁が、FRBは依然として年内2回の利上げを行う可能性がある、との発言が報じられたこともドル安を抑止する結果となった。9日は麻生財務相が為替介入の可能性に言及、同日にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁が、「インフレ率が2%に達する前に利上げする必要がある」と述べており、現在(日本時間7:30)、ドル円は108.40円/ドル近辺で推移している。
■6月の米FOMC(6/14-15)での利上げの可能性について消極的な見方が多勢ではあるものの、EU離脱を問う英国民投票に対する情勢がその時点では見えていること(離脱反対)、大統領選への影響を考慮すると6月以降は利上げが難しくなる、との見方から利上げを指摘する向きもある。
■6月の日銀金融政策決定会合(6/15-16)での追加緩和の可能性は、消費増税の延期の判断に影響してくるであろう。増税延期であれば可能性は低下すると考える。
■5月中は、ギリシャ債務問題、英国民投票に対する予測、米大統領選候補者の発言などから円高に振れる可能性もあり、注意が必要である。
■今週の統計発表・イベントは、12日:国際収支(日本・3月)、13日:米小売売上高(4月)、黒田日銀総裁講演、など。

 

<コンセンサス予想EPSは来期・再来期がマイナス>
■5月6日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期・再来期ベースがマイナスとなった。対象決算期移行時期にマイナスとなるのは、リーマンショック以来と記憶している。今期ベースはプラスであったが、特定銘柄(TDK)の影響を強く受けている。目先、円安に推移していることから株式市場の浮揚が期待されるが、16,000円代後半を奪還するような力強さはないと考える。上値は深追いすることに無いように心がけたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

15,650円~16,900円 (前回16,050円~17,350円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月6日)

今期予想EPS 937.80 (前週 926.95円)
来期予想EPS 1075.22 (前週 1081.20円)
再来期予想EPS 1177.07 (前週 1180.40円)
今期予想PER 17.18 (前週 17.98倍)
来期予想PER 14.98 (前週 15.41倍)
再来期予想PER 13.68 (前週 14.12倍)
来期予想PBR 1.03 (前週 1.06倍)
来期予想ROE 6.85% 前週 6.85%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.92% (前週 6.83%)

*5月6 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 


図1企業業績見通し(コンセンサス)の下ブレからレンジは下方に。

 

図2来期予想ベースのプラス企業比率は、 43.4%→39.6%→33.3%→56.5%→35.1%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、40.6%→25.3%→37.3%→59.3%→42.4%。

決算期移行期間(本決算発表中)に来期・再来期が50%を大きく下回るのはリーマンショック以来。

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

図3今期予想ベースの上昇は特定銘柄(TDK)の影響。来期・再来期は下向き

 

図4日経マーケット欄のPERから逆算して、EPS成長率を算出。結果から見れば1月時点でEPS成長率はマイナスに。これが上向いてこない限りは本格上昇は期待しにくい。

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。