10月23日妥当レンジ 18,100円~19,500円
短期的には利食いでも、悪抜けから上昇局面へ

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<中国の構造転換とは?>
■ロイター通信に拠れば、24日に日銀の中曽副総裁は北京で開かれたフォーラムにおいて、中国経済が大幅に調整するリスクは大きくない、との認識を示すと同時に、当局が経済の構造改革を進める中で中国の輸入減速は不可避、と語った。
■中国リスクに関しては、過剰反応との見方が市場に広がりつつあるが、中国関連銘柄に関しては二極化する可能性に注意が必要である。中国の構造改革は、サービス産業の振興と同時に製造業の内製化比率の引上げであることを鑑みるならば、生産財の日本からの輸出は今後も大きく回復しない可能性も考えられる。他方で、消費財は“日本ブランド”が確立された製品に対する需要は個人消費拡大の恩恵を得られる可能性が期待できる。

 

<利食い等による調整を経て、上昇局面入りへ>
■ドラギ発言(22日)、中国人民銀行の利下げ(23日)によって、世界的金融緩和が続くとの思惑から株価が上昇している。30日の日銀政策決定会合での追加緩和が無かったとしても、国内経済指標の停滞等から緩和期待は持続すると考える。一時的な調整は避けられないとしても、中国懸念の後退、2Q決算に対する懸念の織り込み、郵政3社の上場(4日)から、当面の株価は上昇基調を維持すると考える。
■今週は、米FOMC(27-28日)、米7-9月期GDP速報(29日)、中国PMI速報(1日)が予定されている。国内も、9月商業動態統計(28日)、9月鉱工業生産速報(29日)、9月消費者物価指数(30日)、9月失業率・有効求人倍率(30日)、など統計発表が予定されている。

 

<コンセンサス予想EPSは前週比マイナスが続く>
■23日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、全期間でマイナスであった。ただし、前週比プラス企業数の割合は来期ベースで40%台とやや持ち直している。いずれにしても、今週末には大勢が見えてくることで織り込みが進むと考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,100円~19,500円 (前回17,750円~19,100円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月23日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月23日)

今期予想EPS 1051.41 (前週 1052.16円)
来期予想EPS 1138.37 (前週 1141.00円)
再来期予想EPS 1237.14 (前週 1240.31円)
今期予想PER 17.90 (前週 17.38倍)
来期予想PER 16.54 (前週 16.03倍)
再来期予想PER 15.22 (前週 14.75倍)
来期予想PBR 1.23 (前週 1.20倍)
来期予想ROE 7.46% 前週 7.46%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.74% (前週 6.78%)

*10月23日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1金利低下から妥当レンジは上方シフト

 
図2 
来期予想ベースのプラス企業比率は、 34.4%→40.8%→44.1%→36.9%→45.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、32.7%→32.3%→39.6%→32.0%→35.6%。

今週でマイナス要素は織り込むか?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。