8月28日妥当レンジ 18,300円~19,700円
FOMCまでは19,000円を挟んだ展開が続く

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<7月は消費支出、鉱工業生産ともにマイナス>
■31日発表の家計消費支出(7月)は実質で前年同月比0.2%減と2カ月連続で減少した。食料品など身の回り品の価格上昇から耐久消費財など不要不急の消費を抑制している。 1日発表の鉱工業生産指数(7月)は前月比で0.6%の減少となった。中国向けなど電子部品・デバイス生産が落ち込むとともに、輸送機械や生産機械など輸出品目が低迷した。8月の生産予測は2.8%上昇であるが、金融市場混乱前のヒアリングによる。他方で有効求人倍率は1.21倍と1992年2月以来の水準になった。人手不足感は強い。これは賃金上昇を経て将来の消費支出増に結びつくことが予想される一方で、国内生産のボトルネックになるという矛盾を孕んでおり、輸出主導の景気回復という過去のパターンを描き難くなっている。
■25日に中国人民銀行は、基準金利の0.25%引き下げと預金準備率の0.5%引き下げを発表。26日のニューヨーク連銀のダドリー総裁の「(利上げの)必然性が低下した」との発言を受けて前週半ばには株価は浮揚したものの、週末に行われたジャクソンホールの講演でフィッシャーFRB副議長が9月利上げの可能性に含みを残す発言から、週明けの株式市場は大きく下落した。

 

<コンセンサス予想EPSは来期・再来期が大きくマイナス>
■28日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、過去2週から一転、前週比で来期ベース▲5.38円、再来期▲6.00円減少した。前週比プラス企業数の割合は、来期ベースが48.4%、再来期ベースが41.9%と急落した。企業の先行きに対する自信が揺らいでいることがコンセンサスに反映されつつあると受取れる。かなり注意が必要である。日経平均の妥当レンジも今回も引き下げる。4日に8月の米雇用統計が発表されるが、数字が良くても(9月利上げ予想の台頭)、悪くても株価にはプラスのインパクトは少ないだろう。 17~18日に予定されているFRB理事会までは憶測に振れやすく、しかし、膠着的なマーケット展開が続くものと思われる。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,300円~19,700円 (前回18,650円~20,050円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月28日)

今期予想EPS 1057.92 (前週 1056.26円)
来期予想EPS 1154.33 (前週 1159.71円)
再来期予想EPS 1258.59 (前週 1264.58円)
今期予想PER 18.09 (前週 18.40倍)
来期予想PER 16.58 (前週 16.76倍)
再来期予想PER 15.20 (前週 15.37倍)
来期予想PBR 1.24 (前週 1.26倍)
来期予想ROE 7.51% 前週 7.54%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.68% (前週 6.71%)

*8月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1レンジの下方シフトから割安感は喪失。

 

 

 図2来期予想ベースのプラス企業比率は、48.1%→51.5%→48.2%→55.1%→48.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.5%→53.8%→50.4%→58.6%→41.9%。

再来期ベースの落差が大きい。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。