7月24日妥当レンジ 19,350円~20,850円
6月の貿易統計も輸出数量は伸びず

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<4-6月GDPがマイナスに転じる可能性>
■23日に発表された6月の貿易統計において、輸出金額は対前年同月比で9.5%と伸びたものの、数量指数は0.0%に留まった。輸出金額の伸びは円安効果であり、数量が伸びていないことは、一部の輸出企業を除けば国内産業全体へのプラス波及は限定されることが示唆される。その結果、設備投資次第では4-6月のGDPがマイナスに転じる可能性も指摘されている。貿易赤字は690億円と前年同月比では大きく減少しているが、原油・ガス、石油製品の価格低下による恩恵である。
■輸出品目で寄与度が高いのは自動車(全世界で+16.9%)であるが、仕向け地別では、米国+24.5%、EU+17.1%、アジア+10.5%、中国▲15.8%となっており、米国偏重が強い。円安効果を考慮すればアジア向けの伸び率は限定的であり、中国向けの減少は甚大である。
■中国経済の減速感が強まれば、(中国向けウエイトの高い)アジアへの影響が強まることが危惧される。

 

<コンセンサス予想EPSは2週連続全期間マイナス>
■24日時点のIFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、2週続けて全期間(今期・来期・再来期)の予想値が前週比マイナスとなった。前週比プラス企業数も前回同様に今期、来期でマイナス企業数を下回った。プラス企業群、マイナス企業群に業種的な特徴はあまり見られないものの、小売をはじめ好調と目されている企業の予想EPSへ織り込みが一巡した感がある。
■引き続きボックス圏でのマーケット展開を予想するが、商品市況下落に伴う資源国や中国減速の影響を強く受ける新興国の株価下落が波及するリスクには警戒が必要と考える。
■中小型株の個別物色の流れは残るものの、バリュエーション面での割安感は薄らいでおり、反動には注意が必要と考える。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,350円~20,850円 (前回19,400円~20,900円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月24日)

今期予想EPS 1056.19 (前週 1056.43円)
来期予想EPS 1166.96 (前週 1168.20円)
再来期予想EPS 1265.29 (前週 1266.82円)
今期予想PER 19.45 (前週 19.55倍)
来期予想PER 17.61 (前週 17.68倍)
再来期予想PER 16.24 (前週 16.30倍)
来期予想PBR 1.33 (前週 1.34倍)
来期予想ROE 7.56% 前週 7.58%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.58% (前週 6.58%)

*7月24日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1妥当レンジの上方へのシフトは、止まった状態。

 

 

 

図2 
来期予想ベースのプラス企業比率は、59.1%→59.8%→57.6%→45.0%→45.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、53.8%→56.8%→51.9%→51.1%→53.4%。

2週連続で50%を下回る(来期ベース)状態にはやや警戒が必要か?

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。