5月8日妥当レンジ 18,850円~20,300円
昨年同様、決算発表一巡後に緩やかな上昇基調へ

2015/05/12

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米雇用統計好調、ユーロ圏財務相会合も波乱なし>
■8日発表の4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比22.3万人増とほぼ市場予想と同じ水準であった。また、11日に開かれたユーロ圏財務相会合においては、ギリシャとの合意には至らなかったものの「救済プログラムの条件達成に向けたギリシャの進展を歓迎すると同時に、融資実行前に一段の作業を求める」との前向きなコメントが当局者から発せられた。
■ギリシャのデフォルト・ユーロ離脱の可能性についてはかなり市場で消化されており、その結果、ユーロ・EU側に妥協する余地が生じない構造となっている。一時的な波乱が生じたとしても市場への影響が限定されることが改めて確認されたと言えよう。
■市場の関心は米国経済や中国に移りつつあり、今後は中国の経済指標発表に今まで以上に注意を払う必要があると考える。
 

<事前予想達成への進捗ペースは前年度をやや下回る>
■5月8日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、引き続き対象決算期移行から全ての期間で大きくプラスになった。今回は妥当レンジを据え置く。予想EPS増加に伴う予想ROEの上昇があるものの、10年債利回りの上昇が影響した。
■決算発表前の「来期」が発表後の「今期」、「再来期」が「来期」であることから3月末時点の「来期」「再来期」(発表後の「今期」「来期」)の現時点(5/8時点)での進捗率を次頁に示した。前年の同時期よりやや下回っており、最終着地点においても決算前予想に対しては未達の可能性が強い。
■しかし、こうした状況は次第に株価に織り込まれつつあり、前年度同様に決算発表一巡後から緩やかな株価の上昇基調に向かうと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,850円~20,300円 (前回 18,850円~20,300円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月8日)

今期予想EPS 997.96 (前週 975.24円)
来期予想EPS 1098.27 (前週 1088.71円)
再来期予想EPS 1198.59 (前週 1183.62円)
今期予想PER 19.42 (前週 20.03倍)
来期予想PER 17.65 (前週 17.94倍)
再来期予想PER 16.17 (前週 16.50倍)
来期予想PBR 1.39 (前週 1.40倍)
来期予想ROE 7.89% 前週 7.78%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.80% (前週 6.76%)

*5月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 

妥当レンジは前週比変わらず。株価が下落した分、割安感が強まっている。次週も新年度への対象決算期の転換による予想EPS上昇が見込まれることから、レンジの上方へのシフトが期待できる。

 

 

図2 

いずれも3月最終週と52週との比較。
決算発表前の「来期」は発表後の「今期」(同様に発表前の「再来期」は発表後の「来期」)である。発表前に対する発表後の進捗率は、前年をやや下回る水準。

 

 図3期待収益率の水準から見ても「危険ゾーン」からはかなり離脱したと考えられる。

   図4 
来期予想ベースのプラス企業比率は、57.1%→49.4%→51.4%→71.8%→61.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、55.6%→51.1%→44.9%→65.3%→59.5%。
引き続き前年の同時期よりも高い水準にありポジティブ。 

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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