5月1日妥当レンジ 18,850円~20,300円
押し目買いの好機到来とみる

2015/05/08

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<新年度予想に揺れる展開>
■過去4回のレポートにおいて、新年度の会社計画が慎重であることによって、短期的に株価調整が生じる可能性を指摘してきたが、ゴールデンウィーク前に現実化した。
■米国経済指標が市場予想よりも弱含みであったこと、中国経済へ疑念、さらには6日のイエレンFRB議長による「概して現時点では高い水準だ」という市場への警鐘も影響している。
■8日(金)に発表される4月の米雇用統計では3月からの大きな回復が見込まれているが、雇用統計好調→早期利上げ観測の台頭→米長期金利上昇→米国株式市場の下落、というシナリオも考えられる。一方では、米経済の底堅さを確認することによるドル高、(国内)輸出関連企業への期待というシナリオもあるが、マーケット心理が萎縮している中では、短期的にはマイナス面が表れやすい可能性が考えられる。

 

<コンセンサス予想EPSは、今期予想ベースの伸びが低いが>
■5月1日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、対象決算期変更の効果から全ての期間で大きくプラスになった。ただし、今期予想ベースの伸びは前年同期と比較して低調に留まっている。
■今回は妥当レンジを大きく引き下げる。計算上の前提となる一株純資産(BPS)が増加したことによって予想ROEの改善が微少に留まったこと、長期金利(10年国債利回り)が上昇したことが要因である。
■今期予想ベースの伸びは低いが、来期・再来期に関しては前年同期(2014年)を超える変化率を現時点では示していることは明るい材料。向こう2週間は新年度への転換が進むことによる予想EPSの押上げが見込めることから今回が妥当レンジのボトムと考える。連休明けも株価が下落する局面があるのであれば積極的な押し目買いのタイミングと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

18,850円~20,300円 (前回 19,250円~20,750円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月1日)

今期予想EPS 975.24 (前週 917.93円)
来期予想EPS 1088.71 (前週 1055.56円)
再来期予想EPS 1183.62 (前週 1159.84円)
今期予想PER 20.03 (前週 21.81倍)
来期予想PER 17.94 (前週 18.97倍)
再来期予想PER 16.50 (前週 17.26倍)
来期予想PBR 1.40 (前週 1.47倍)
来期予想ROE 7.78% 前週 7.77%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.76% (前週 6.74%)

*5月1日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

妥当レンジは大きく下方にシフトしたが、今後2週間は新年度への転換が進むことから、今回が目先の底と考える。

 

 

 図2

いずれも3月最終週と5月頭との比較。
来期・再来期ベースの予想EPSの伸びが前年(2014)より上回っている点は非常にポジティブ。

 

図3

前回のレポートにおいて、「期待収益率では危険ゾーン」と述べたが、長期金利の動向には引き続き注意が必要と考える。
図4 
来期予想ベースのプラス企業比率は、47.5%→57.1%→49.4%→51.4%→71.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、48.1%→55.6%→51.1%→44.9%→65.3%。
前年の同時期よりも高い水準にありポジティブ。

 

[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

 

 

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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