4月24日妥当レンジ 19,250円~20,750円
新年度予想EPSの出足は極めて緩慢
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
<追加緩和期待は剥落か?>
■30日の日銀金融政策会合と展望レポートの発表を控え、追加緩和に対する思惑が台頭したことが、株式市場の高値更新を支えた要因であったが、ここに来て沈静化しつつある。今回は見送られる公算が高いと予想される。先週の上昇分の幾ばくかはまだ剥落する可能性があるだろう。なお、3月の消費者物価指数や有効求人倍率・失業率の発表は5月1日の予定である。
■3月期決算企業の本決算発表が本格化しつつあるが、企業側の新年度計画を見る限りは、微増益あるいは減益予想が多く、慎重姿勢が伺える。実際、コンセンサス予想EPSの4月下旬時点の進捗状況(3月最終週との比較)を過去3年間と比較すると極めて緩慢な状態になっている(次ページの表をご参照)。特に自動車関連企業が厳しい。アナリストの予想も慎重な会社計画を見てやや後退することも考えられる。
<コンセンサス予想EPSは、微動に留まる>
■4月24日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、来期ベースが僅かなプラスであったが、今期及び再来期はマイナスであった。この時期は、対象決算期の新年度へのシフトと伴って予想EPSが増加してゆく傾向が例年ならば見られるのであるが、厳しい展開になっている。
■今回も妥当レンジを引き上げるが、計算上の一株純資産の減少(=予想ROEの上昇)と長期金利の低下が寄与したものである。
■決算発表は、28日:ホンダ(7267)、NTTドコモ(9437)、パナソニック(6752)、デンソー(6902)、アイシン精機(7259)、30日:ソニー(6758)、富士フイルムHD(4901)、村田製作所(6981)、富士通(6702)、1日:伊藤忠商事(8001)、住友商事(8053)、が主だったところであるが、自動車関連及び総合商社には高い期待は置き難い。5連休を控えて模様眺め、あるいは調整色のやや強い展開を予想する。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,250円~20,750円 | (前回 18,900円~20,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月24日)
今期予想EPS | 917.93円 | (前週 919.80円) |
来期予想EPS | 1055.56円 | (前週 1055.37円) |
再来期予想EPS | 1159.84円 | (前週 1160.38円) |
今期予想PER | 21.81倍 | (前週 21.37倍) |
来期予想PER | 18.97倍 | (前週 18.62倍) |
再来期予想PER | 17.26倍 | (前週 16.94倍) |
来期予想PBR | 1.47倍 | (前週 1.44倍) |
来期予想ROE | 7.77% | (前週 7.76%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.74% | (前週 6.74%) |
*4月24日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジは今回も上方シフト。
いずれも3月最終週と4月最終週の比較。
2015年の今期予想ベースは、15/3期の下方修正企業が含まれることで3/27時点より予想EPSが減少していると考えるが、来期予想の変化(1054.38⇒1055.56)が小さいことがやや不安である。
インプライド・リスク・プレミアムで見る限りは割高水準ではないが、期待収益率では危険ゾーン。長期金利の低下が株高を支えている構図は意識しておく必要があるだろう。
来期予想ベースのプラス企業比率は、54.4%→47.5%→57.1%→49.4%→51.4%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.3%→48.1%→55.6%→51.1%→44.9%。
前年の同時期との比較では明らかに弱い。
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |