1月23日妥当レンジ 17,850円~19,250円
ECB量的緩和を市場は好感、貿易統計も改善

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<市場は一転、強気ムードに>
■22日に欧州中央銀行(ECB)が国債を買入れる量的金融緩和を発表した。為替市場ではユーロ安が進む一方で独DAX指数に象徴されるように株式市場では好感されている。25日のギリシャ総選挙では急進左派政党が事前予想通り勝利したものの市場では織り込み済みであった。
■26日発表の貿易統計(12月速報)では輸出が前年同月比で金額で+12.9%、数量で+3.9%と伸び、貿易赤字も6,607億円と前年同月比でほぼ半減した。
■中国の成長率の問題、ウクライナ問題、原油安による資源国への影響など懸念材料は引き続き少なくはないものの、市場は一転強気ムードが広がっている。国内企業業績においては3Q決算発表が本格化しつつあるが、概ね好調であり、日経平均は早晩18,000円台を奪還する動きが期待される。

 

<コンセンサス予想EPSは、3週連続、前週比で全期間プラス>
■1月23日時点の、IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、前週比では全期間でプラスとなった。前週比プラスとなった企業比率も再来期ベースで50%を下回ったものの(=マイナス企業のほうが多かった)、今期・来期は好調を持続した。マイナスになった業種では、石油、非鉄、商社など資源関連が、プラスとなった業種では、自動車、電子部品、電線、化学などが挙げられる。
■妥当レンジは今回大きく引き上げることにより、12月26日を上回り、リーマンショック以降で過去最高の水準となる。現株価水準は依然として妥当レンジ下限を下回っており、引き続き“買いシグナル”が点灯している状態にある。
■3Q決算を踏まえて翌期を視野に置く段階に来ている。再来期ベースでの妥当レンジは18,800円~22,100円。12ヵ月の移動平均で算定した妥当レンジの下限は約18,500円。現状の日本株水準はかなり割安であり、ポテンシャルが大きいと言えよう。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

17,850円~19,250円 (前回 17,300円~18,650円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月23日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月23日)

今期予想EPS 930.23 (前週 926.90円)
来期予想EPS 1044.96 (前週 1041.07円)
再来期予想EPS 1140.03 (前週 1137.84円)
今期予想PER 18.83 (前週 18.19倍)
来期予想PER 16.76 (前週 16.20倍)
再来期予想PER 15.36 (前週 14.82倍)
来期予想PBR 1.34 (前週 1.29倍)
来期予想ROE 7.97% 前週 7.96%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.15% (前週 7.18%)

*1月23日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1妥当レンジは過去(リーマンショック以降)最高水準を更新。
株価は依然として妥当レンジ下限を下回る→買いシグナル継続 

 

図2

来期予想ベースのプラス企業比率は、63.5%→57.1%→60.6%→59.0%→57.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.2%→51.9%→66.1%→57.1%→46.0%。
再来期の50%割れは一過性のものかどうか注視が必要。
(注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になる)

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。