11月21日妥当レンジ 16,900円~19,700円
コンセンサスEPSは再び増加傾向

2014/11/26

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<国内の材料出尽しから海外動向の影響を受けやすい展開に>
■21日に衆議院は解散し、12月2日公示、14日投開票の予定。消費税率引上げの2017年4月への1年半延期を国民に問うという建前である。ただし、自民・公明の与党が崩れない限り安倍政権の続投となるだけに、新味ある政策は期待しづらい面がある。日本経済の自立回復に任せるだけの状態が続くだけに景気浮揚は緩やかなものにならざるを得ない。消費税延期も織り込まれ、10月末に日銀は追加量的緩和を発表しているだけに、経済指標が芳しくなくても切れるカードは限定的である。そのため、米国をはじめとした海外経済・市場動向の影響を強く受けるマーケット展開に再び戻ると考える。
■118円台後半に為替相場があるものの、為替と株価の相関性は薄らぎつつある。海外売上高比率の高い日経平均採用銘柄は円安メリットを受けると考えられるが、内需への依存が高い二部・新興市場の株価上昇は鈍くなっている。円安進行によって二極化が強まるものと考えられる。
 

<コンセンサス予想EPSは今回も全期間プラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は、今回も今期・来期・再来期ベースのいずれもがプラスとなった。来期、再来期ベースのプラス幅は大きく、前週比でコンセンサスEPSがプラスとなった企業数もマイナス企業数を大きく上回った。その結果、日経平均妥当レンジを今回も上方修正する。来期予想EPSベースでプラスとなった企業群には電機、自動車、鉄道、海運など。マイナス企業群は、製紙、石油、電線、銀行、化学、通信、医薬品など内需系が多い。
■今回のデータでは期待リターン、インプライド・リスクプレミアムのいずれも上昇しており、高値警戒感はやや後退した状態にある。長期金利が低く抑えられていることが、理論株価を押し上げている点には引き続き注意を要するが、選別は強まるものの、目先的には上昇トレンドが続くと考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

16,900円~19,700円 (前回 16,750円~19,500円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月21日)

今期予想EPS 917.49 (前週 916.60円)
来期予想EPS 1023.04 (前週 1016.82円)
再来期予想EPS 1121.47 (前週 1114.00円)
今期予想PER 18.92 (前週 19.08倍)
来期予想PER 16.97 (前週 17.20倍)
再来期予想PER 15.48 (前週 15.70倍)
来期予想PBR 1.34 (前週 1.34倍)
来期予想ROE 7.88% 前週 7.77%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.83% (前週 6.70%)

*11月21日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 

妥当レンジは2009年以降、最高水準を更新中。 

 

図2 

来期予想ベースのプラス企業比率は、57.1%→46.3%→59.5%→66.9%。
再来期予想ベースは58.4%→45.9%→57.1%→63.3%。
企業業績見通しは好調を持続。

 

 図3

投資家の期待リターン(要求利回り)はやや上昇。予想ROEも上向いており、警戒感は後退。 

 

図4

JPX400の対TOPIX比率(=JPX400÷TOPIX)は上昇傾向。高ROE銘柄への物色傾向が強まっている。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。