6月27日妥当レンジ 14,700円~17,100円
円高要因と米国指標発表を視野にやや模様眺めの展開

2014/07/01

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<国内経済指標は斑模様>
■5月の有効求人倍率(6/27発表)は、4月より0.01ポイント改善し、1.09倍と1990年代前半の水準になった。完全失業率も4月の3.6%から3.5%へと改善した。
■5月の鉱工業生産指数(6/30発表、速報値)も前月比0.5%上昇し、2ヵ月ぶりに回復した。ただし、消費増税後の回復は鈍いとの見方も強い。新設住宅着工戸数(6/30発表)は前年同月比15%減少した。家計調査(6/27発表)では、1世帯当たりの消費支出(2人以上世帯)は実質で前年同月比8.0%減と4月の4.6%から減少幅が拡大した。
■7月下旬から8月中旬に1Q決算発表が予定されているが、発表される業績数値には力強いものは限定的にとどまる可能性が示唆される。ただし、消費増税の影響度合いについての見極めが難しいことから芳しくない数値が出ても株価を大きく押し下げる要因にはなり難いと考える。

 

<イラク情勢によっては円高も>
■今週は、ISM製造業指数(7/1)、ISM非製造業指数(7/3)、雇用統計(7/3)など米国経済指標の発表が予定されているが、市場予想はほぼ前月並みとなっており、ドル高を牽引するほどのインパクトは無さそうである。
■イスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が、29日にシリア北部からイラク中部にまたがる地域の独立を宣言した。アラブ各国、イスラム世界での反応次第では新たな混乱の引金となる可能性もあり要注意である。短期的には円高要因になることにも注意。

 

<コンセンサスEPSは2週連続で前週比減少>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は2週続けて前週比で僅かであるが全期間において減少した。ただし、特定少数銘柄の影響が強いので現時点では神経質になる必要ないと考える。やや円高に推移していることからNT倍率は低下傾向にあるが、引き続き、輸出企業銘柄に相対的優位性は残ると考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,700円~17,100円 (前回 14,850円~17,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月27日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月27日)

今期予想EPS 881.72 (前週 882.68円)
来期予想EPS 979.87 (前週 980.67円)
再来期予想EPS 1072.68 (前週 1074.34円)
今期予想PER 17.12 (前週 17.39倍)
来期予想PER 15.41 (前週 15.65倍)
再来期予想PER 14.07 (前週 14.29倍)
来期予想PBR 1.20 (前週 1.21倍)
来期予想ROE 7.76% 前週 7.76%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.82% (前週 6.77%)

*6月27日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

図1 
引き続きレンジ下限近くに位置しており、割安感は強い。 

 

図2

コンセンサスEPSは2週連続して減少したものプラス企業比率は57.8%と高い水準
(ただし、決算期の狭間でサンプル数が少ない点には注意)。 

 

図3

長期金利低下によって、予想配当利回りとの差は上昇傾向にある。 

 

図4

 日経VIの低下傾向は一段と強まる(6/27時点は17.33)。2012年10月の17.15に迫る。大きな変化の可能性が示唆される。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。