6月6日妥当レンジ 14,550円~16,900円
目先のイベントを消化し、上昇局面続く

2014/06/10

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<ECB理事会、米雇用統計は市場予想通り>
■5日のECB(欧州中央銀行)理事会において、金融緩和策として、1)政策金利の引き下げ(0.25%→0.15%)、2)準備預金の利率をマイナス0.1%にする、3)域内の企業への融資積み増しを行う銀行への低利融資、が公表された。ABS(資産担保証券)への将来の買い入れの可能性に対して言及があったが、量的緩和策は見送られた。
■6日発表の米雇用統計(5月)においては失業率は6.3%と横ばいであったものの、非農業部門雇用者数の増加は21.7万人と4ヵ月連続で20万人を上回った。
■ECB理事会で波乱が生じなかったことや米国の景気回復が順調であることが確認され、欧米の株式市場も好感した。米国長期金利も緩やかに上昇しており、マーケットは今週も堅調な推移が予想される。 

<コンセンサスEPSはじわじわプラス>
■IFIS/TIWコンセンサス225(日経225のコンセンサスEPS)は3月決算発表が終了した5月16日時点からもじわじわ増加している。5月中旬以降の決算説明会で好印象を得られたものや、経済統計が堅調なことを受けたものによる。妥当レンジも大きく引き上げられた。
■この3週間の日経平均株価の上昇が1,000円に達していることから小幅な調整が入るという見方もあるが、日経平均株価の水準は依然として割安であり、引き続き上昇すると考えている。
■株価下落が生じるとすれば、NYなど海外市場での株価下落と、為替が円高に大きく振れることが要因として挙げられるが、ECB理事会と米雇用統計というイベントを通過したこと、米国長期金利低下から反転傾向にあること、日本の貿易収支赤字で引き続き高水準が見込まれること(消費増税の反動が小さいということは輸入が拡大している可能性)、などから当面は海外株安、円高の可能性は小さいと考える。
■NT倍率、日経平均/日経JASDAQの比率、などから依然として大型株に優位性があると考える。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,550円~16,900円 (前回 14,250円~16,550円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月6日)

今期予想EPS 886.23 (前週 884.71円)
来期予想EPS 981.39 (前週 978.51円)
再来期予想EPS 1073.83 (前週 1072.11円)
今期予想PER 17.01 (前週 16.54倍)
来期予想PER 15.36 (前週 14.95倍)
再来期予想PER 14.04 (前週 13.65倍)
来期予想PBR 1.19 (前週 1.15倍)
来期予想ROE 7.72% 前週 7.68%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.76% (前週 6.81%)

*6月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1
妥当レンジも日経平均が上昇したのと同程度上方にシフトしており、まだまだ割安な水準。 

 

図2

プラスの変化は弱まわったが、50%以上をほぼ維持している。企業業績の緩やかな上昇が続く限り、株価下落の不安は少ない。 

 

 

図3
 倍率は昨年末のピーク(12.72倍)からすると低位にあり、市場に過熱感は無い。

 

図4 

2013年5月、12月にはインプライド・リスク・プレミアムが大きく低下しているのが見て取れる。ここからも市場には過熱感が無いことが伺える。 

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。