5月16日妥当レンジ 13,750円~15,950円
決算の悪材料は出尽くし、下値は限定的と考える

2014/05/20

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<決算発表終了、14年度予想は事前のコンセンサスを下回る>
■16日時点のコンセンサス予想EPSは、今期ベースが875.28円、来期ベースが968.30円。これにそれぞれ対応するのは3月28日時点の来期ベース(5月16日時点では今期)の893.84円、再来期ベースの993.27円である。決算前予想を今期ベースで2.1%、来期ベースで2.5%下回った。
■それ以上に妥当レンジの算出に大きく影響したのが、BPS(1株純資産)の増加であり、その結果として予想ROE(来期ベース)が低下しており、妥当レンジは思いがけず下方にシフトしてしまった。
■マーケット全体としては利益成長の鈍化が見込まれる中で、配当性向は低位に留まっており(実績ベースで20%台前半)、ROEの低下を齎す要因になっている。その結果、日本株のマーケット水準は中期的に抑制気味の展開が続くと考えられる。こうした環境では増配や自社株買いに強く反応し易くなると考えられるだけに株主還元に関連したニュースにより注意を払うべきと考える。

 

<輸出関連のポーションは低下させるべきか>
■20~21日の日銀金融政策決定会合に注目する向きもあるが、政策的な変更は見込み辛い。ただし、追加緩和の可能性が否定されることによる波乱も限定的と思われる。
■21日に4月の貿易統計が公表されるが、消費税率引上げ前の駆け込み需要による輸入が一巡することから、前年同月を下回る6,460億円の赤字(2013年4月は8,773億円の赤字)が見込まれている。こちらもマーケットへの影響は限定的だろう。
■米国長期金利(10年国債利回り)は、引き続き2.5%前後で推移している。米国が量的緩和を縮小しているにも関わらず金利が低下しているのは、(緩和姿勢を打ち出している)ユーロからドルへの資金シフトという見方以外に米国の潜在成長率の低下という見方も存在する。為替への影響が大きいだけに注視する必要があるだろう。輸出関連は、さらに円安に進む可能性が低下しているだけにポーションを減少させる必要があるかもしれない。 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,750円~15,950円 (前回 14,000円~16,250円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月16日)

今期予想EPS 875.28 (前週 856.60円)
来期予想EPS 968.30 (前週 949.74円)
再来期予想EPS 1054.88 (前週 1040.12円)
今期予想PER 16.11 (前週 16.58倍)
来期予想PER 14.56 (前週 14.95倍)
再来期予想PER 13.36 (前週 13.36倍)
来期予想PBR 1.11 (前週 1.18倍)
来期予想ROE 7.63% 前週 7.86%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.82% (前週 6.91%)

*5月16日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 図1

予想EPSは前週比増加したにもかかわらず、予想ROEの低下から思いがけず妥当レンジは下方シフト。しかし、ここが底と考える。 

 

 図2
コンセンサスが前週比プラスとなった企業数は引き続き60%を越えており、過度に弱気になる必要はない。
 

 

図3
 注)日経新聞の市況欄から作成(今期ベース)。PER水準は昨年6月の水準を下回る。
 

 

図4

1株純資産(BPS)が大きくは値上がり予想ROEは低下したが、当面はBPSの増加は限定的なことからROE低下が短期間にさらに進む可能性はない。

 

 

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。