11月15日妥当レンジ 14,200円~16,500円
円安により強気の見通しが広がる。

2013/11/20

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<イエレン氏の上院公聴会を契機に株価上昇>
■14日に次期FRB議長候補のイエレン副議長の上院公聴会が行われ、「金融政策は長期間かなり緩和的な状態が続く公算が大きい」との見解が示されたことから、NY株式は連日最高値を更新した。日本株市場もNY株高と円安を受けて、日経平均は15,000円台を回復した。
■米金融緩和は本来はドル安を齎すと考えられるだけに、為替の動きはやや不可思議である。米長期金利が2.7%前後に高止まりしており、日本の長期金利が日銀の国債買取により0.6%前後と低く抑えられていることが影響している可能性もある。また、株価上昇が、為替の円安に作用したという見方もあるかもしれない。
■日本株を押し上げた要因としては、あまり注目はされていないが、日経の予想値が急上昇した点を指摘したい。日経新聞市況欄から日経平均株価と予想PERから逆算して求められる予想EPSは、8日の923.12円から日々上昇を続け、15日には962.30円となった。この計算方法は最近では、個人投資家にも知られるようになっており、ここに注目した投資家が存在した可能性も考えられる。

<コンセンサスと日経予想値の乖離が拡大>
■11月15日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、前週比で3期間(今期・来期・再来期)で増加した。今回は、EPSの増加等から妥当レンジを上方に修正する。前週比のプラス企業数・マイナス企業数ではほぼ半々であり、ウエイトの高いソフトバンク(9984)のプラス効果が影響している。また、前述の日経予想EPS(逆算値)とIFISコンセンサスEPSの乖離は、183.10円(日経予想値の方が大きい)と過去最大になった。
■19日にOECD(経済協力開発機構)は2014年の世界経済見通しを新興国の景気減速などを織り込み5月時点の4.0%から3.6%に下方修正した。また、OECDはユーロ圏のデフレ回避に量的金融緩和が必要であることをECBに提言したと伝えられている。米緩和継続と円安によって日本株は目先的には強気の見通しが広がるが、こうした状況も頭の片隅には置いておきたい。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,200円~16,500円 (前回 13,700円~15,900円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月15日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月15日)

今期予想EPS 779.20 (前週775.00円)
来期予想EPS 874.97 (前週868.94円)
再来期予想EPS 976.86 (前週971.40円)
今期予想PER 19.46 (前週 18.18倍)
来期予想PER 17.33 (前週 16.21倍)
再来期予想PER 15.53 (前週 14.50倍)
来期予想PBR 1.35 (前週1.28倍)
来期予想ROE 7.78% 前週7.90%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.55% (前週6.80%)

*11月15日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 妥当レンジは、5月時点を上回ってきた。

  

           

 期待リターンは5月17日時点の7.27%を下回る7.18%に。ただし、インプライド・リスク・プレミアムで見た場合は、まだ5月時点(6.44%)よりも高い位置(6.55%)にある。徐々に翌年度にへの移行を迎えることを考えると割高とは一概には言えない。

   

  

乖離は183.10円に拡大。どちらを重視するかで株価評価が大きく異なる

  

  

 日経JASDAQ平均(小型株)は、日経平均(大型)に比べて割安感が強まってきた

  

    

                

 出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。