9月20日妥当レンジ 14,000円~16,200円
米国景気を慎重に伺う展開が続く

2013/09/25

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米景気回復ペースにやや翳り、量的緩和縮小見送り>
■17~18日の米FOMCにおいて量的緩和縮小が見送られた。背景には、依然として高止まりしている失業率と、5月初めの1.6%台から9月上旬には3.0%付近まで上昇した長期金利によって住宅市場の回復が鈍化していることにある。
■10月にも緩和縮小を開始する可能性を示唆したセントルイス連銀総裁の発言はあったが、FRB執行部が緩和縮小を決定するには、労働市場の改善が継続する確信が必要である、との見方が有力視されている。
■日本国内では10月1日の消費税率引上げを踏まえて神経質な展開が予想される。米緩和縮小を見送り等による米長期金利の低下によって、為替が円高方向に振れつつある点も要注意。
■金融緩和(継続)期待が市場センチメントを動かしており、不安定な状態が今後も続く可能性が指摘できる。

<コンセンスEPSは、全期間で上昇>
■9月20日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、3週間ぶりに全期間(今期・来期・再来期)が上昇した。しかし、3分の2以上の企業で見通しの変化が行われていない閑散としたタイミングであり、今後のトレンドを示すものではない。日経平均の妥当レンジは表記の通り引き上げる。
■インプライドの期待リターン(リスクプレミアム+長期金利、来期ベース)は、7.32%と5月の株価下落直前(5/17)の7.27%に近づいている(過去1年では7.11%(1/4)が最低値であるが、これは決算期変更前であるだけに単純比較できない)。市場は10月下旬からの2Q決算時に予想EPSが上方修正されることを期待しているのかもしれないが、これが不発に終われば調整を余儀なくされる可能性も考えられる。
■19日に発表された8月の貿易統計において輸出(数量で前年比1.9%増)を牽引したのは米国向けであった。為替も含めて米景気動向を慎重に見極める必要がありそうだ。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

14,000円~16,200円 (前回 13,700円~15,850円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月20日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月20日)

今期予想EPS 792.59 (前週792.01円)
来期予想EPS 878.90 (前週878.30円)
再来期予想EPS 977.36 (前週976.25円)
今期予想PER 18.60 (前週 18.19倍)
来期予想PER 16.77 (前週 16.40倍)
再来期予想PER 15.08 (前週 14.76倍)
来期予想PBR 1.33 (前週1.30倍)
来期予想ROE 7.91% 前週7.92%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.63% (前週6.64%)

*9月20日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

 現状は妥当レンジで中位の水準。                

 


期待リターンの低下は市場センチメントの回復を示している。しかし、ファンダメンタル(企業業績)が良化しているわけではない。5月17日の水準(7.27%)に期待リターンが近づきつつある点は要注意。

       

 

  

変化企業のウエイト(=プラスまたはマイナス変化企業数÷225)。現在は決算の狭間の閑散期でこの状態はあと2~3週間続く。 

                

 

  

円安期待が剥落すると株価は大きく下落する可能性も。

  

                

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
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株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。