6月28日妥当レンジ 13,100円~15,100円
センチメントは一先ず回復、円安株高に期待できる局面

2013/07/02

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米国金利は落ち着き、日銀短観もポジティブな内容>
■過剰に反応した米国債券市場に対して、米金融当局関係者の沈静化に向けた発言もあり、6月25日の2.6%台をピークに米長期金利はやや落ち着きを取り戻している。先週発表された耐久財受注、消費者信頼感指数、新築住宅販売件数などが概ね良好であったことも市場のセンチメント好転に繋がったと考えられる。
■1日に公表された日銀短観においては、特に大規模製造業の景況感が円安を背景とした輸出採算の好転から2四半期連続で改善した。
■中国のシャドーバンキング問題は、6月20日に13.0%まで跳ね上がった上海銀行間金利が、先週末(28日)には4.9%にまで下がったことによって鎮静化している。29日にシャドーバンキングの内、高利回りで資金を集めている理財商品の規模について中国当局関係者が8兆2,000億元(約132兆円)と公表したことも市場に安心感を与えている(日本のGDPとほぼ同額の465兆円との報告書がMoody’sから出されている)。中国当局の公表により、パニックはひとまず回避されたと考えられる。
■月曜日(7月1日)の日本株は、円安を受けて底堅く上昇した。巻き戻しの円買いもピークを過ぎたとの見方もある。日本株の水準は、相対的に割安感が強く、再び円安を受けて株高のトレンドに戻る可能性がある。5月23日の日経平均株価15,942円が上限として意識される展開が、2Q決算が発表される11月まで続くと考える。

<企業業績の上方シフトは見込み難い>
■6月28日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、今期、来期は僅かながらプラスであったものの、再来期はマイナスであった。前週比でプラスとなった企業数は、マイナスとなった企業数をいずれの期間でも下回った。企業業績見通しが上方シフトする段階ではない。今回、日経平均の妥当レンジは、テクニカルな要因から若干上方に修正する。

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,100円~15,100円 (前回 12,900円~14,850円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(6月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(6月28日)

今期予想EPS 802.19 (前週800.71円)
来期予想EPS 887.96 (前週887.77円)
再来期予想EPS 979.99 (前週981.65円)
今期予想PER 17.05 (前週 16.52倍)
来期予想PER 15.40 (前週 14.90倍)
再来期予想PER 13.96 (前週 13.48倍)
来期予想PBR 1.23 (前週1.20倍)
来期予想ROE 7.99% 前週8.07%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
6.69% (前週6.80%)

*6月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

日経平均は妥当レンジの下限を割り込んだ水準から切り返した。妥当レンジの下方シフトも止まっており、小動きの相場を予想。

                  

 
 期待リターンは再び低下傾向(リスクオン)。予想ROEの改善が見込めない中ではマーケットの大幅な上昇は限定的と考える。  

  

 

 

前週比EPSがプラスとなった企業数が、マイナスとなった企業数を、昨年11月以来下回った(年末年始のイレギュラーな値を除く)。企業業績の好転は見込み難い。

              

  

今期予想における日経予想とアナリストコンセンサスには依然として大きな開きがある。これが大幅に縮小する局面が買いシグナル? 

 

        

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。