5月2日妥当レンジ 13,650円~15,850円
予想EPS水準の変化を考慮すればまだ割安感は強い

2013/05/08

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

<米雇用統計発表を機に円安に転換、株価も急伸>
■ADP雇用統計(米)をはじめとして海外経済指標が不振であったことから、先週は一時的に対ドルで97円台前半まで円高が進み、そのため株価がやや軟調に推移した。しかし、3日発表の米雇用統計(4月)が市場予想を上回ったことに加え、3月分の公表値が大幅に上方修正されたことから週明けは99円台/ドルと再び円安となっている。NY市場の上昇を受けて、連休明け(7日)の東京市場では4年11ヵ月振りに日経平均が14,100円台を回復した。

<妥当レンジはまだ上方シフトの余地が大きい>
■5月2日時点の「IFIS/TIWコンセンサス225」は、対象決算期変更によりいずれの期間も大幅に予想EPSが増加した。これを踏まえて妥当レンジを13,650円~15,850円に修正する。
■コンセンサス予想には多少のタイムラグが生じていると考えられ、今後の発表分も合せて考えるならばまだ大きな増分が期待できる。最終的には今週予想ベースのEPSは770円前後に、来期予想ベースでは850円超になるものと推測する。予想ROE水準も今期予想ベースで8.0%弱、来期予想ベースで8.5%程度が予想される。それを視野に置くならば、日経平均の妥当レンジも現在の表記よりも1,000円程度の上方シフトの可能性がある。
■決算発表終了後の予想EPSの水準を視野におけば、7日に達成した14,180円は妥当レンジの下限にも満たない。業績発表が続くこの1週間余はマーケットは強気基調が持続すると予想する。
■4月5日から5月2日までの期間において日経平均の上昇率は6.35%であったのに対して、日経JASDAQ平均は15.65%上昇した。インプライド(株価から逆算した)の期待リターンの差は0.41%(今期ベース)と大きく縮小しており、小型株の割安感は急速に薄れつつある。ここからは再び大型の主力輸出企業に妙味があると予想する。
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

13,650円~15,850円 (前回 13,600円~15,750円)

  *「IFIS/TIWコンセンサス225」(5月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出

 

◇IFIS/TIWコンセンサス225(5月2日)

今期予想EPS 666.85 (前週618.14円)
来期予想EPS 827.18 (前週804.03円)
再来期予想EPS 910.40 (前週896.52円)
今期予想PER 20.47 (前週 22.46倍)
来期予想PER 16.50 (前週 17.27倍)
再来期予想PER 14.99 (前週 15.49倍)
来期予想PBR 1.35 (前週1.41倍)
来期予想ROE 8.21% 前週8.15%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
 
7.00% (前週6.85%)

*5月2日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

 

 

妥当レンジはさらに上昇。日経平均株価は5月2日時点ではレンジ下限に近接。

          

  
 予想ROE(来期ベース)は8.21%に上昇。期待リターン(来期ベース)も7.56%に上昇しており、過熱感は無い。  

  

 

JASDAQ(小型株)と日経平均の期待リターンの差は前週の1.44%から0.41%へと急激に縮小。小型株の相対的な割安感は消失しており、大型株の方に妙味が高い。

      

  

予想EPS(来期ベース)が前週比プラスとなった企業の比率は高水準で推移。まだ2週間は最低でもこの状態は持続すると推測する。

       

         出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成 
     いずれも2012年1月から表示

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

    
 
株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。