9月2日妥当レンジ 27,831円~29,992円
9月は主要中央銀行の利上げが続く

2022/09/06

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント

<堅調な内容の経済指標はインフレ懸念から売り材料>
■先週も米国株式市場には利上げに対する懸念による暗雲が立ち込めていた。30日発表の7月の雇用動態調査では非農業部門の求人件数が1123.9万件と、34.2万件上方修正された前月から19.9万件増加した(市場予測は1030万件)。求人件数は失業者の2倍を上回る水準の労働需給逼迫が続いている。同日発表のコンファレンスボード消費者信頼感指数(8月)は前月から7.9ポイント上昇の103.2と市場予想(97.4)を上回った。1日発表のISM製造業景況指数(8月)は前月比横ばいの52.8。市場(52.0)は若干の悪化を見込んでいた。同日発表の新規失業保険申請件数(8/21-27週間)は23.2万件と6千件下方修正された前の週の改定値から5千件下回った。こうした経済の底堅さを示す指標はインフレの持続とそれに伴うFRBの利上げ姿勢を強めるものとして、国債利回りの上昇と、株式市場の下落を齎している。2日発表の8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比31.5万人増とほぼ市場予想並みであったことや失業率が3.5%→3.7%へと悪化したが、株価を一時的に浮揚させるだけに留まった。FRB高官の発言もタカ派の論調が続いた。30日にはNY連銀のウィリアムズ総裁が「(金融引き締め姿勢を)来年まで続ける」と発言。31日にはクリープランド連銀のメスター総裁が「来年の早い時期までに政策金利を4%の水準に引き上げ、しばらくその水準に据え置く必要がある」と発言した。
■今月は主要国の中央銀行の政策会合が予定され、そのいずれもにおいて利上げが見込まれている。オーストラリア(6日・市場予想+0.5%)、カナダ(7日・+0.75%)、ECB(8日・+0.5~0.75%)、イギリス(15日・+0.5%)、スウェーデン(20日・+0.75%)、米国(20-21日・+0.75%)。米国(FOMC)までの利上げが一巡するまでは株価は上値の重い展開が予想される。しかしながら、利上げ一巡後は悪抜けから市場の反発も期待されるだろう。
■新たな悪材料としては、半導体大手エヌビディアが一部の画像処理半導体の中国向け輸出に制限を課されたように米中の貿易摩擦の拡大する懸念。ノルドストリームの稼働停止の延長、中国のゼロコロナ政策の継続と不動産市場が流動性危機が顕在化しつつある。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

27,831円~29,992円 (前回28,575円~30,804円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月2日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月2日)

今期予想EPS 1859.18 (前週1833.64円)
来期予想EPS 1868.29 (前週1887.62円)
再来期予想EPS 2016.36 (前週2023.13円)
今期予想PER 14.87 (前週15.62倍)
来期予想PER 14.80 (前週15.17倍)
再来期予想PER 13.71 (前週14.16倍)
来期予想PBR 1.10 (前週1.13倍)
来期予想ROE 7.41% 前週 7.43%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.93% (前週 6.89%)

9月2日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

妥当レンジはコンセンサス予想EPSの減少から3週連続で下方にシフト。ただし、特定銘柄(ソフトバンクG)の影響を除くと来期・再来期ベースのコンセンサス予想EPSはややプラス。ECB理事会での大幅利上げ、9FOMCでの利上げとドットチャート修正を視野に下押し圧力の強い展開を見込むが、FOMCを境に悪抜けを期待する。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.2%→44.446.348.450.0%→60.1
再来期予想ベースのプラス企業比率は、63.344.251.9%→52.1%→54.3%→59.1%。
足もとは円安効果によるコンセンサス予想のプラス傾向が優勢。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。