7月8日妥当レンジ 27,981円~30,154円
インフレも景気後退も織り込んだように見られるが
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米長期金利上昇は一旦ピークアウトしたが>
■経済指標の悪化を受けて米長期金利(10年国債利回り)は6日に2.74%まで低下した。6日に公表されたFOMC議事要旨において利上げに強い姿勢を滲ませる内容であったが、景気後退よりもインフレの悪影響を優先することで金利上昇に歯止めがかかったと市場では捉えられたようである。先週の米国株式市場においては金利に対して敏感なハイテク株の上昇が目立ち、ナスダック総合指数が5日連続で上昇した。
■しかし、8日発表の6月の米雇用統計において非農業部門雇用者数が前月比37.2万人増と市場予想(約26万人)を大きく上回り、平均時給も前年比+5.1%(5月は+5.3%)と高止まりしたことを受けて再び米長期金利は上昇し、インフレ抑制のために金融引き締めが進むとの見方が広がっている。
■安倍元首相が銃撃によって死亡するというショッキングなニュースがあったが、その弔いから参議院選挙(8日投開票)で自民党が圧勝したことで週明けの日本株は大きく上昇した。米金利上昇を受けて、ドル円は137円台と円安が進んだことも輸出企業のメリットと11日時点では前向きに捉えられたが、海外株式市場の下落を受けて懸念材料と受け止められている。
■インフレによる金融引き締めや経済減速も一時的に市場は織り込んだように見えたが、終息が見えないロシア・ウクライナ戦争、中国での新型コロナ感染の広がりによる制限措置の拡大、景気後退の足音などから株式市場は上値の重さを再び意識する展開が続くと思われる。
■今週は、13日:米消費者物価(6月)、14日:米生産者物価(6月)、15日:米小売売上高(6月)と金利への影響の強い指標の発表が続く。15日には中国経済指標(4-6月実質GDP、6月の工業生産・小売売上・固定資産投資・新築住宅価格)の発表が集中する。
■末筆であるが、安倍元首相が亡くなられたことに哀悼の意を表したい。政権の要であると同時に、外交における重要人物を失ったことは国益としても重大な損失であることは言うまでもない。あの時が転換点だったと将来において語られないことを祈るばかりである。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
27,981円~30,154円 | (前回27,645円~29,815円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月8日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月8日)
今期予想EPS | 1769.83円 | (前週1770.07円) |
来期予想EPS | 1889.20円 | (前週1884.14円) |
再来期予想EPS | 2044.44円 | (前週2034.09円) |
今期予想PER | 14.98倍 | (前週14.65倍) |
来期予想PER | 14.04倍 | (前週13.77倍) |
再来期予想PER | 12.97倍 | (前週12.75倍) |
来期予想PBR | 1.10倍 | (前週1.08倍) |
来期予想ROE | 7.82% | (前週 7.83%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.32% | (前週 7.41%) |
7月8日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
コンセンサス予想は1Q決算での悪化を予想しているが、現時点ではしっかり。しかし、現状より上に行く可能性よりは、下に行く可能性が高いだけに株価に対しては強気にはなれない。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 56.6%→57.3%→53.2%→53.8%→50.5%→57.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.5%→54.0%→53.0%→51.9%→49.5%→55.4%。
商社は弱含み、半導体・電子部品・機械はまちまち。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |