4月1日妥当レンジ 28,398円~30,681円
新年度業績見通し下降の中、IT/DX関連の成長株に光明

2022/04/05

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<「逆イールド」発生も米経済の成長持続を市場は見込む>
■3月29日に米債券市場で2年物の国債利回りが10年債を上回った。5月ならびに6月のFOMCでの0.5%の利上げを市場が織り込んだ結果として「逆イールド」が生じている。ただし、「逆イールド」は景気後退のサインと看做されているが、景気後退まで1~2年のタイムラグがあることや、賃金上昇が金利上昇をカバーするとの見方などから米株式市場は底堅さを保っている。
■2月の米雇用動態調査(JOLTS・29日発表)によると非農業部門の求人件数は前月から僅かに減少したものの1126.6万件と過去3番目の高水準にある。一方、自発的離職者数は435.2万人と大量離職が続いている。全米経済研究所が2月に発表した分析は、自然失業率がコロナ前の4.5%から昨年末には5.9%に上昇したというものであり、FRBが見込む自然失業率4.0%を大きく上回っている。1日発表の3月の米雇用統計では非農業部門の就業者数は43.1万人増と市場予想と同等であったが、2月(67.8万人増から75.0万人増に上方修正)よりも鈍化している。注目されるのは失業率が2月の3.8%から3.6%に低下している点であり、人不足が一段と強まっている可能性が指摘される。賃金上昇とサプライチェーンの供給力不足によるインフレ過熱が懸念されそうだ。

<日銀短観で22年度の経常利益は0.9%減の見通し>
■日経225銘柄のコンセンサスDI(コンセンサスEPSが前週比プラスとなった企業の割合:TIW/IFIS作成)は、来期ベース(22年度)が5週連続で50%を下回っている。資源価格の上昇や円安による交易条件の悪化など、企業収益への影響は4月下旬からの3月期企業の本決算で具現化する可能性が強い。
■1日発表の日銀短観においても、大企業製造業の業況判断DIは3ポイント悪化のプラス14、先行きはプラス9とさらに悪化する。22年度計画の全規模全産業の経常利益は0.9%減になる見通しである。一方で設備投資は底堅く、特にソフトウェア投資は全規模全産業で7.2%増の見込みである。資源高をはじめとしたインフレの影響を受けずに底堅い需要が見込めるIT/DXを主軸とした成長株に再び注目が集まりそうである。

 

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,398円~30,681 (前回28,583円~30,863円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月1日)

今期予想EPS 1649.47 (前週1650.53円)
来期予想EPS 1816.62 (前週1816.33円)
再来期予想EPS 1905.72 (前週1903.68円)
今期予想PER 16.77 (前週17.06倍)
来期予想PER 15.23 (前週15.50倍)
再来期予想PER 14.52 (前週14.79倍)
来期予想PBR 1.18 (前週1.20倍)
来期予想ROE 7.72% 前週 7.72%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.08 (前週 7.00%)

4月1日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

原油価格の高止まりや非鉄など資材価格、食料価格の上昇から全般的には製造業の収益環境は楽観できない。コンセンサス予想EPSの下方圧力がある中で全体マーケットは膠着した展開を予想する。一方で、ソフトウェアへの投資意欲は全産業で強く、IT/DX関連の成長企業の収益環境は良好であり、投資資金の受け皿として高いパフォーマンスを実現する可能性が高いと考える。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 50.0%→49.447.348.844.046.2
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.652.8%→49.454.0%→51.3%→47.6
来期ベースは5週連続で50%割れ。再来期も50%を下回った。業績見通し悪化の前兆か?
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。