1月28日妥当レンジ 28,013円~30,234円
目先リバウンドも米経済減速を視野に重い商状継続か?

2022/02/01

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

 

<米経済指標に注目>
■26日のFOMCを受けて世界の株式市場は大きく下落した。「まもなく(政策金利を)引き上げるのが適切だ」、「3月会合で利上げに適切な条件が整うと想定している」というコメントは市場の想定通りであったものの、パウエル議長が記者会見において毎回の利上げの可能性や利上げ幅(通常の0.25%ではなく)0.5%の可能性を排除しなかったことからFRBがタカ派に転換したとの疑心が拡大した。実際、アトランタ連銀のボスティック総裁はFTのインタビュー記事(29日付電子版)において「(3月の会合において)必要あらば利上げ幅0.5%とする可能性」を示唆した。こうした情勢を受けて、市場では22年の利上げ回数が4回から5回を織り込み、年7回説(バンク・オブ・アメリカ)も語られるようになった。
■ただし、ここまで来るとQT(量的金融引き締め)の開始時期やペースに注目が残るものの、利上げに関しては一旦は織り込み済みと考えられる。1月の下げ幅が大きかっただけに目先的にはリバウンド局面にあると言える。
■しかしながら、まだ楽観はできない。前回の本稿でも述べたが、金利と株価バリュエーションという単純な問題ではなく、世界景気がスタグフレーション(不況下の物価上昇)に向かっている可能性に対する懸念が払拭できていないからだ。1月25日にIMFは世界経済見通しを更新し、22年の実質成長率を10月時点の4.9%から4.4%に引き下げた。特に米国(5.2%→4.0%)、中国(5.6%→4.8%)の修正幅が大きい。また、IMFは1月28日の中国経済の年次報告において「不動産部門が想定以上に失速すると、金融や財政に悪影響を及ぼすリスクがある」との懸念を示した。1月の財新・マークイット中国製造業PMIは前月の50.9から49.1へと急落し、20年2月以来の水準となっている。FRBとウクライナ情勢に目を取られていたが中国経済も気がかりである。今週は米国経済指標の発表が続くが景気悪化を示す内容が見られるようであれば再び市場は下向きになる可能性には気を付けたい。
■4日から北京オリンピックが開催される。オリンピック期間は中国への配慮からロシアはウクライナへ侵攻する可能性は低いとの見方もあるが、過去の例からは何方とも言えない。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,013円~30,234 (前回28,450円~30,735円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月28日)

今期予想EPS 1649.53 (前週1649.77円)
来期予想EPS 1791.26 (前週1785.72円)
再来期予想EPS 1889.22 (前週1881.12円)
今期予想PER 16.20 (前週16.68倍)
来期予想PER 14.92 (前週15.41倍)
再来期予想PER 14.14 (前週14.63倍)
来期予想PBR 1.15 (前週1.18倍)
来期予想ROE 7.74% 前週 7.68%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
7.21 (前週 7.12%)

1月28日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

日経平均株価と妥当レンジ(下限)との乖離が大きくなってきたので一旦はリバウンドする水準にあると考えられる。市場は既に22年に4~5回の利上げを織り込んでいると考えられるだけに今後は景況感がFRBの動向以上に注視されよう。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.6%→39.159.6%→50.5%→50.4%→63.3
再来期予想ベースのプラス企業比率は、54.8%→31.752.7%→46.449.254.9%。
一転、来期ベースが60%台に。企業業績にはまだ陰りはなさそうだ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。