12月24日妥当レンジ 28,931円~31,292円
1月高のアノマリーを見込んだ上昇は楽観か??

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<S&P500最高値更新、ダウも最高値に迫る>
■20日をボトムとして、米国株の上昇が続いている。ダウ工業株30種平均は、20日から27日までの1週間で1,370ドル(+3.92%)上昇、最高値に迫る。S&P500は、23日におよそ2週間ぶりの最高値を更新、27日も一段高となった。
■ヘッジファンドのリスク回避のカラ売りから買戻しに転じたとみられることや、オミクロン型に対する脅威が後退したこと、1月高のアノマリーへの期待が挙げられるが、インフレと金融引き締めへの懸念は依然として残る中での市場の楽観はやや意外な展開であった。23日発表の11月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比+5.7%、コア(食品・エネルギーを除く)でも+4.7%であった。
■一方、上昇が続く米国株に対して、日本株は出遅れ感が強い。20日から27日の1週間の日経平均株価の上昇率は2.65%に留まり、9月14日の30,670円を6%余り下回る。米長期金利の上昇から円安が進行しているが、原油をはじめとした資源価格の上昇から円安のデメリットが認識されている。また、24日に閣議決定された22年度の予算案107兆円も成長投資が限定的との失望から、赤字国債発行が減少するにも関わらず、財政赤字への懸念が指摘されている。また、11月の消費者物価指数(24日発表)は前年同月比+0.5%の上昇となった。通信料の値下げが▲1.48pt影響していることを考慮すれば実質的には約2%の上昇である。
■また、中国経済への不確実性が増している。11月の生産者物価指数(9日発表)は前年同月比+12.9%となった。10月の+13.5%よりは低下したものの、高水準が続いている。また、「共同富裕」を掲げる習近平主席のネット企業や学習塾、不動産投資への規制が経済にマイナス影響を与えているとの指摘も少なくない。こうした中で9日の人民日報に「改革開放は党の偉大な覚醒」という経済重視を謳った論文が掲載されたことから共産党内部の対立の存在を見る向きもある。
■さて、2022年はコロナ禍からの脱却が期待されるが、世界的に金融政策の方向転換が見込まれる中で、米国の中間選挙、ロシア・中国など地政学リスク、脱炭素とエネルギー問題等々、株式市場は引き続き緊張感の強い展開が続きそうだ。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,931円~31,292 (前回28,817円~31,157円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(12月24日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(12月24日)

今期予想EPS 1645.32 (前週1642.68円)
来期予想EPS 1780.09 (前週1778.66円)
再来期予想EPS 1880.35 (前週1878.39円)
今期予想PER 17.49 (前週17.38倍)
来期予想PER 16.17 (前週16.05倍)
再来期予想PER 15.31 (前週15.20倍)
来期予想PBR 1.20 (前週1.19倍)
来期予想ROE 7.45% 前週 7.45%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.93 (前週 6.96%)

12月24日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

オミクロン型に対する警戒が薄らいだことによって、米国株は経済回復を視野に上昇したものの、日本株は107兆円という22年度予算案が示されたものの、成長投資への支出に乏しく、むしろ財政悪化に対する懸念が指摘されている。欧米ではやや懸念が後退しているものの、日本ではこれからオミクロン型の影響が生じることもあり、海外投資家のクリスマス休暇による薄商いもあって日本株は出遅れ感が強い。ただし、企業業績見通しは安定しており、下値不安は少ない。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 62.459.6%→54.4%→47.547.251.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、65.460.054.3%→48.948.954.8%。
前週はやや持ち直し、方向感は見えてこない。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。