10月15日妥当レンジ 29,206円~31,577円
中国経済減速の顕在化は何を引き起こすのか?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米長期金利上昇懸念はやや後退したが>
■先週のNY市場は9月の消費者物価指数(13日発表)がコアが+4.0%と市場予想の範囲にとどまったことによるインフレ懸念の後退、新規失業保険申請数の減少(14日)、米大手銀行決算が好調であったこと、などからNYダウは3万5000ドル台を回復した。こうした米国市場の流れと円安による輸出関連への期待を受けて日経平均株価も15日に2万9000円台を回復した。
■一方では中国の経済減速が顕在化しつつある。中国国家統計局が18日に発表した7-9月の実質国内総生産は、前期比0.2%(季調済み)に留まった。前年同期比では4-6月の7.9%から4.9%と縮小。電力不足や行動制限が影響したとされているが、工業生産、消費、固定資産投資のすべての面で弱含みとなっている。9月の卸売物価指数(14日)は前年同月比+10.7%と過去最大となり川下の民間企業の収益悪化が懸念される。
■中国不動産大手の恒大中心集団の資金繰り問題は他の不動産会社のデフォルトに波及しつつある。中国の不動産問題が今後も成長の大きな足かせとなる可能性が強そうだ。中国の銀行における不動産向け融資は銀行融資全体の7.4%と試算されているが、資本の半分超に匹敵する。これに不動産担保ローンや住宅ローンを加えると資本の5倍超に相当するとの試算もある。さらに理財商品として大量に不動産に流入している投資が加わる。また、中国の財政は政府の土地売却収入が税収の5割を占めているという構造を抱えており、不動産市況の悪化は民間部門の問題だけでは終わらない。
<中国の情報統制強まる>
■14日に米マイクロソフトはLinkedInの中国での運営を年内に終了させると発表した。また、8日に中国政府は国営メディア以外の民間企業が報道を行うことを禁止する方針を示した。報道規制が強化され、今後の情勢に一段と懸念が強まる。
■国内では、新型コロナウイルス新規感染者数が急減しており、旅行・宿泊やイベント・飲食など景気回復への期待感が高まっている。ただし、企業業績の上方修正期待は半導体不足の影響や資源高・円安によるコスト上昇などから大きくはない。上値追いは引き続き慎重に臨みたい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
29,206円~31,577円 | (前回28,921円~31,291円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月15日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月15日)
今期予想EPS | 1687.60円 | (前週1687.28円) |
来期予想EPS | 1766.24円 | (前週1760.26円) |
再来期予想EPS | 1843.66円 | (前週1837.26円) |
今期予想PER | 17.22倍 | (前週16.62倍) |
来期予想PER | 16.46倍 | (前週15.93倍) |
再来期予想PER | 15.77倍 | (前週15.27倍) |
来期予想PBR | 1.25倍 | (前週1.24倍) |
来期予想ROE | 7.57% | (前週 7.75%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
7.00% | (前週 7.18%) |
10月15日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
15日発表の9月の米国小売売上高は事前予想(前月比▲0.2%)に対して+0.7%と好調。14日発表の新規失業保険申請件数(10/3~9日分)が29万3000件と新型コロナが拡大した2020年3月以来はじめて30万件を下回った。こうした指標から米国経済回復を期待した米国株の上昇が日本株もけん引したが、日本株は中国経済減速懸念と円安による内需型企業の採算悪化の可能性を抱えており、今後も米国株に追従するとは考え難い。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.5%→72.1%→44.3%→44.3%→51.1%→46.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.1%→67.4%→44.8%→44.8%→52.4%→44.4%。
再び50%割れに。変調の可能性が徐々に高まりつつある。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |