10月1日妥当レンジ 28,685円~31,023円
リバウンドを期待しつつもポジション調整へ!

2021/10/05

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<5つの悪材料>
■本日(5日)の日経平均株価は一時、前日比で約1,000円を下げるような厳しい商状であった。株価下落を齎しているのは、主には次の5点である。1)まずは中国恒大集団の資金繰り問題。昨日、明確な理由が告げられずに香港取引所で売買停止になったことも不安を駆り立てた。2)米国の債務上限問題。民主党内で子育て支援や気候変動対策など3.5兆ドルを優先する左派とインフラ法案1.5兆ドルを推進する中道派が争う中で18日にも期限切れになると見られる上限問題が棚ざらしにされている。3)中国の電力不足によって工場の稼働停止が生じている問題。中国政府の環境規制の強化やオーストラリアからの石炭輸入を制限したことによる石炭価格の上昇等によって発電事業者の経営悪化が生じている。4)世界的な天然ガスや原油価格の上昇。ロシアを巡る地政学的要因、オーストラリア産石炭の価格上昇、景気回復などの要因からエネルギー価格が急上昇している。5)エネルギー価格上昇や経済再開に伴うサプライチェーンにおける労働者の不足などから物価上昇が続いている。それに伴い欧米での金利上昇圧力も高まっている。米金利の上昇は新興国からの資金のドルへの還流を促すことから新興国の金利上昇と経済悪化を引き起こす可能性もある。

<解消しないエネルギー不足とスタグフレーション懸念>
■地球温暖化防止に向けた化石燃料への規制強化から新たな採掘や設備更新への投資にブレーキがかかっている。再生可能エネルギーへの転換が進められているが、供給不足から石油や天然ガス価格の高止まりが予想される。転換が遅れれば投機的に高騰する可能性もある。景気回復が進まない中での物価・金利上昇が生じればスタグフレーションとなる可能性も残る。
■「コンセンサスDI」(前週比で予想EPSがプラスとなった企業数の比率)は2週連続で50%を割り込んだ。企業業績見通しに対する“変調”が生じている可能性もある。やや割安となった現水準ではリバウンドを狙いたいところではあるが、リバウンド局面ではポジション調整を図り、動静を見つめるタイミングかもしれない。

 

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

28,685円~31,023 (前回28,778円~31,114円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月1日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月1日)

今期予想EPS 1675.82 (前週1685.23円)
来期予想EPS 1754.00 (前週1763.69円)
再来期予想EPS 1837.93 (前週1845.75円)
今期予想PER 17.17 (前週17.95倍)
来期予想PER 16.40 (前週17.15倍)
再来期予想PER 15.65 (前週16.39倍)
来期予想PBR 1.22 (前週1.22倍)
来期予想ROE 7.43% 前週 7.13%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.94% (前週 6.64%)

10月1日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 

株価の大幅下落によって妥当レンジの下限をやや下回った。中国恒大集団の影響も不安材料であるが、エネルギー価格上昇による物価上昇が懸念される。企業業績の見通し(コンセンサスDI)も不透明感が増しており、妥当レンジ自体が引下げられる可能性もある。短期的には割安感からサポートされると考えるが、一時的に反発しても上値は重い。一旦、ポジション調整の検討も。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 61.362.048.572.144.344.3
再来期予想ベースのプラス企業比率は、62.261.949.167.444.844.8
今回もサンプル数は少ないものの、来期・再来期が連続50%割れ。変調の可能性強まる。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
TIWマガジン「投資の眼」   株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。

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