8月6日妥当レンジ 26,485円~28,658円
企業業績好調から底堅いものの、上値は重い
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米雇用統計の好調を反映してNYダウは最高値更新>
■先週は、4日にADP雇用統計が市場予測を大幅に下回ったことから長期金利低下、ドル安、株価(NYダウ)下落が一時的に生じたものの、ISM非製造業景気指数(4日)が前月比プラスとなったことや、6日発表の米雇用統計(7月)が好調だったことを受けて、NYダウは7月26日以来の最高値更新となった。
■米雇用統計は非農業部門雇用者数の前月比において、6月分が85.0万人増から93.8万人増に上方修正され、7月分はそれを上回る94.3万人増となった。失業率も7月は5.4%(6月:5.9%)と大きく改善した。
■一方、日本株は4-6月期の企業業績は好調であったものの、国内での新型コロナウイルス感染の拡大、中国政府によるIT系をはじめとした規制強化や中国の輸出鈍化、内閣の支持率の低下に加えて、地球温暖化防止促進による産業へのマイナス影響が強く認識されるなど、株価は上値が重い展開が続いている。ホンダの2000人超の希望退職の実施が象徴するようにEVシフトによる自動車産業でのリストラクチャリングが本格化することが懸念される。
<足元はボックス圏での動きか?>
■日経新聞によると6日までに4-6月期決算を発表した1,263社の内7割が増益であったとのこと。そのため足元の株価は底堅く推移するものと思われるが、国内景気の押上げにはつながってはいない。経団連が集計した18業種159社の夏季賞与の平均妥結額は前年夏に比べて8.27%減少であった。オリンピックの高揚も過ぎ、新型コロナ感染拡大により政府批判が強まっており、(少なくとも)衆議院選挙まで不安定な政局が続くこともマイナス材料である。
■世界的な熱波から山火事が頻発している。9日にIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)は、2021~40年に気温上昇が1.5度に達するとの予測を公表した。温暖化対策の強化は待ったなしの状態であり、企業にもピンチとチャンスが訪れる。株式市場も一層敏感になることが見込まれよう。
■今週の経済指標は、11日に米消費者物価指数(7月)の発表が予定されている。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
26,485円~28,658円 | (前回26,319円~28,451円) |
「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月6日)
今期予想EPS | 1583.54円 | (前週1567.03円) |
来期予想EPS | 1694.56円 | (前週1682.25円) |
再来期予想EPS | 1796.16円 | (前週1787.62円) |
今期予想PER | 17.57倍 | (前週17.41倍) |
来期予想PER | 16.42倍 | (前週16.22倍) |
再来期予想PER | 15.49倍 | (前週15.26倍) |
来期予想PBR | 1.14倍 | (前週1.14倍) |
来期予想ROE | 6.94% | (前週 7.02%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.64% | (前週 6.72%) |
8月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
前回から妥当レンジの算出基準を「再来期ベースからの割戻し」から「12カ月フォワード予想(来期ベースおよび再来期ベースの算出された妥当レンジを期間によって按分」に変更を行った。
来期予想ベースのプラス企業比率は、56.5%→51.9%→59.7%→58.6%→47.4%→62.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.4%→45.1%→54.1%→54.7%→43.6%→57.8%。
市場全体の上方修正を反映して、プラス比率は上昇。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |