7月16日妥当レンジ 25,600円~27,700円
変異株拡大から経済回復への懸念深まる

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<NYダウ 700ドル超の下落>
■19日のNY市場でダウ工業株30種平均が前週末比725.81ドル(▲2.09%)の下落となった。東南アジアでの新型コロナウイルスの感染者・死者の拡大に加えて、ワクチン接種が進んでいる英国・米国での変異株の感染者拡大から経済再開に水を差すと同時にワクチンの効力への疑義が高まっている。
■19日に英国のイングランドにおいて、ほぼすべての感染防止に関する規制が撤廃された。1日の感染者数が5万人に達する中でも死者数が抑制されているとしてジョンソン首相は規制撤廃に踏み切った。世界中がその行方に注目している。
■日本国内では、東京圏を中心に新型コロナの感染者数が急増している。また、選手や関係者の感染、楽曲担当者の過去のイジメ発言、等々、東京オリンピックに関連した混乱が強まっている。その結果、東京オリンピックのオフィシャルスポンサーであるトヨタ自動車が大会CMを見送るという事態まで引き起こしている。さらには、飲食店の酒類提供に対する規制の問題など政府に対する信認低下が強まっており、秋に予定される衆議院選挙への不透明感が一段と深まっている。
■今週は木曜からの4連休を控えて、積極的な買い手のない展開が見込まれる。決算発表も22日に日本電産の第1四半期の発表があるものの発表予定はわずか22社となっている。

<1Q好調でも上方修正は限定的か>
■新型コロナウイルス変異株の感染拡大から世界経済の回復に再び懸念が強まっている中で、企業の業績見通しも慎重な方向に傾く懸念がある。来週から決算発表が本格化するものの、国内の感染者拡大も相まってセンチメントの改善には時間を要する可能性もある。ただし、昨日のNY市場が大幅な下げであったにも関わらず、本日の東京市場の下げ幅は比較的小幅であったことから見て取れるように、底値に近い水準と推察される。TIWが算出している日経平均株価の妥当レンジ内の水準に入ってきており、すでに調整は終わっていると考えている。ここからは買い下がるつもりで強気に臨みたい。

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

25,600円~27,700 (前回25,400円~27,500円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月16日)

今期予想EPS 1562.07 (前週1561.71円)
来期予想EPS 1675.25 (前週1671.50円)
再来期予想EPS 1781.51 (前週1778.78円)
今期予想PER 17.93 (前週17.89倍)
来期予想PER 16.72 (前週16.72倍)
再来期予想PER 15.72 (前週15.71倍)
来期予想PBR 1.17 (前週1.16倍)
来期予想ROE 6.98% 前週 6.93%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
6.64% (前週 6.59%)

7月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


ファンダメンタル(企業業績)と株価の乖離はほぼ解消された。1Q業績発表で悪抜けとなるか。



来期予想ベースのプラス企業比率は、 55.0%→60.656.5%→51.9%→59.7%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.659.8%→51.4%→45.154.1%。
今週は決算発表予定が22社と少なく、明確なトレンドはなさそうだが。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。