4月16日妥当レンジ 24,300円~26,300円
局面が変わった? 台湾有事を想定した歴史的転換点か

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<米中の動静に今後は株式市場の注意が強まる>
■先週、米NYダウは好調な経済指標を受けて、過去最高値を更新した。米小売売上高(15日発表)は、2月分が上方修正されたうえ、3月は前月比+9.8%と市場予想(+5.9%)を大きく上回った。3月の米鉱工業生産(15日)は市場予想を下回ったものの、住宅着工件数(16日)は市場予想を上回った。3月の米消費者物価指数(13日)は前年同月比+2.6%と2年7ヵ月ぶりの高い伸びであったことや好調な経済指標が発表されたにも関わらず、米長期金利は1.5%台へと低下。それも米国株の押上に繋がったと考えられる。
■一方で日本株は、米国市場の活況にも関わらず、小動きに留まった。2月の機械受注(14日)において「船舶・電力を除く民需」の受注額が2ヵ月連続の減少となった。また、新型コロナウイルスの感染拡大から「まん延防止等重点措置」の対象が10都道府県に拡大された(16日)。さらに、大阪府は「緊急事態宣言」の発令を要請。東京都も要請を行う模様である。
■16日(米国時間)に菅首相はバイデン大統領と首脳会談を行い「東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試み、地域の他者に対する威圧に反対することで一致した」との声明を発表。「台湾海峡の平和的解決を促す」と中国の核心的利益に踏み込んだ。
■バイデン政権の発足当初、米中対立はトランプ政権より軟化するとの見方が優勢であったが、強硬な態度を強めつつある。米商務省は、米国内の民間企業に対し、中国製IT機器やサービスの利用を5月中旬にも、政府の許可を事前に取るよう求める制度を導入する。対象範囲も通信網や重要なインフラに使う機器に加え、ソフトウエアなどにも対象を広げた(17日日経夕刊報道)。また、13日にはアフガンからの米軍の完全撤退を発表。中東から東シナ海・南シナ海に戦略重点地域が移っていることを示したと言えよう。
■本日の日本株の下落は、短期的な要因(新型コロナの拡大・企業決算における会社見通しがコンセンサスを下回ることへの懸念)に加えて、顕在化したリスク(台湾有事の可能性・日本企業への影響) が入り混じっている。中国政府の動静に今後は注視が必要となろう。

 
 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

24,300円~26,300 (前回24,200円~26,200円)

「IFIS/TIWコンセンサス225」(4月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(4月16日)

今期予想EPS 1364.07 (前週1354.51円)
来期予想EPS 1484.88 (前週1445.99円)
再来期予想EPS 1609.27 (前週1601.15円)
今期予想PER 21.76 (前週21.98倍)
来期予想PER 19.99 (前週20.59倍)
再来期予想PER 18.45 (前週18.59倍)
来期予想PBR 1.27 (前週1.27倍)
来期予想ROE 6.35% 前週 6.17%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.80% (前週 5.61%)

4月16日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

 

 


参考値(ERP=エクイティ・リスク・プレミアム 6.0%)の日経平均株価(4/16現在)は 28,600円(前週比+100円)。 再来期予想ベースでERP 6.0%(現在価値への割戻しなし)の場合の理論値は30,250円(前週比+150円)。

 


来期予想ベースのプラス企業比率は、 51.6%→68.254.1%→63.657.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.063.958.9%→61.759.0%。
プラス企業比率は高水準が続く。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。