11月6日妥当レンジ 20,100円~21,800円
想定外の大幅高も、目先的にはスピード調整か?
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<結果はどちらであっても不透明感の払拭が株高に>
■NYダウ平均は先週(2-6日)1週間で6.9%の上昇となった。その前の週(10/26-30日)が▲7.4%の下落であったのでほぼ戻した形である。さらに、昨日(9日)は、ファイザーのコロナワクチンの治験効果の発表から大幅高となった。結果的には、米大統領選に伴う混乱は(最終決着はまだであるが)杞憂に終わった。(後講釈ではあるが)トランプ氏あるいはバイデン氏のどちらが勝利したとしても事前の不透明感が拭われたことで米国株は上昇に転じたと言える。
■市場は事前には、民主党が上下両院を制覇する「ブルーウェーブ」を期待していたが、共和党が上院で過半数をおさえることで、大幅な増税やIT企業への規制強化は実現し難くなるとして、株高を支持する理由を変えた。ただし、上院はジョージア州が決選投票となることから1月5日までは確定せずに 「ブルーウェーブ」の可能性も残る。
■新型コロナウイルス感染者数は、8日に全世界で累計5千万人を突破した。米国・欧州での再感染が深刻化しつつある。欧州委員会が5日に発表したユーロ圏経済見通しでは、10-12月は実質成長率を▲0.1%と再びマイナスを見込んでいる。21年の経済成長率を前回予想(7月)の6.1%から4.2%に引下げた。失業率も20年見通しの8.3%から21年は9.4%と上昇を見込む。6日発表の米雇用統計(10月)では、失業率が前月の7.9%から6.9%へと大幅に改善した。しかし、4月時点では失業者の78%が一時解雇であったが、10月は29%にまで低下しており、今後は改善ペースが鈍化するものと予想される。
■他方で中国経済の好調が伺える。7日発表の中国貿易統計(10月)において、輸出は前年同月比+11.4%、輸入は同+4.7%と伸びた(ドル建)。
■日本は比較的コロナ感染者数は抑えられているものの、冬場にかけて拡大することが懸念される。しかし、深刻な欧米との比較や堅調な中国経済からの恩恵も期待されることから日本株が選択される傾向が中期では継続すると考える。
■ただし、2Q決算発表の進捗により、製造業の業績底入れの織り込みや、バリュエーション面、上昇ペースなどを鑑みると目先的にはスピード調整が生じる可能性も考えられる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,100円~21,800円 | (前回19,500円~21,100円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(11月6日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(11月6日)
今期予想EPS | 1029.05円 | (前週1017.76円) |
来期予想EPS | 1272.95円 | (前週1268.46円) |
再来期予想EPS | 1450.59円 | (前週1449.86円) |
今期予想PER | 23.64倍 | (前週22.58倍) |
来期予想PER | 19.11倍 | (前週18.11倍) |
再来期予想PER | 16.77倍 | (前週15.85倍) |
来期予想PBR | 1.09倍 | (前週1.04倍) |
来期予想ROE | 5.71% | (前週 5.76%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.49% | (前週 5.61%) |
11月6日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(RP=リスクプレミアム 6.0%)の日経平均株価(11/6現在)は 23,600円(前週比+600円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 63.8%→50.0%→53.3%→51.4%→52.6%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、60.9%→51.7%→47.5%→48.5%→51.9%。
3週間ぶりに全期間で50%超。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |