10月16日妥当レンジ 19,800円~21,400円
米大統領選前後の不透明感が強まる展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<中国と世界の対立が深まるが、経済は中国頼み>
■先週は、欧州での新型コロナウイルスの感染再拡大による経済制約が強まったことや、米国の追加経済対策の妥結への期待の浮沈など、市場は方向感の定まらない展開が続いた。
■国際通貨基金(IMF)が13日に改定した世界経済見通しでは2020年の世界全体の成長率は、6月時点の▲5.2%から▲4.4%へと上方修正された。特に中国経済の成長加速が寄与しており、20年の中国は+1.0%から+1.9%へと上方修正された。13日発表の中国貿易統計(9月)では、輸出は前年同月比+9.9%と8月(+9.5%)から伸び率を拡大、輸入も同+13.2%と大きく伸びた(8月は▲2.1%)。19日発表の7-9月の中国GDPは実質で前年同期比+4.9%と4-6月(+3.2%)より拡大した。同日発表の固定資産投資(1-9月)、工業生産(9月)、小売売上高(9月)のいずれの指標も8月より改善・伸張した。
■欧米がコロナ禍からまだ抜け出せない中で、世界経済の牽引役として中国に期待が集まる一方で、米中の対立構造は強まっている。米国務省は中国アリババ集団傘下のアント・グループを「エンティティー・リスト」に追加する提案をトランプ大統領に提出した(14日・ロイター報道)。米国土安全省傘下の市民権・移民局が10月中旬に「共産党や全体主義の政党に所属する外国人が、米国で永住権や市民権を取得するのを許可しない」という指針を通知した(16日・日経)。一方、中国はこうした処置への対抗として、17日に、安全保障などを理由に禁輸企業リストをつくり、特定企業への輸出を禁じる「輸出管理法」を12月に施行することを決定した。
<11月3日の米大統領選挙前後に大きな波乱も?>
■トランプ大統領は「選挙監視員」を各地の投票所に5万人配置する方針と伝えられている。また、選挙で敗れた場合に、共和党が多数を占める州議会で選挙人を直接選ぶ方式を議論しているとも報じられた(米アトランティック誌)。投票結果が接戦となった場合には、当選が確定するのにかなりの時間を要する可能性もあり、その間に暴動の発生も否定できない。22日には2度目の大統領候補者討論会が予定されているが、バイデン氏のリードが縮小するようであれば市場のリスクオフが広がる可能性があることには留意したい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,800円~21,400円 | (前回19,900円~21,500円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(10月16日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(10月16日)
今期予想EPS | 1004.21円 | (前週973.87円) |
来期予想EPS | 1263.51円 | (前週1249.47円) |
再来期予想EPS | 1446.42円 | (前週1435.26円) |
今期予想PER | 23.31倍 | (前週24.25倍) |
来期予想PER | 18.53倍 | (前週18.90倍) |
再来期予想PER | 16.19倍 | (前週16.46倍) |
来期予想PBR | 1.07倍 | (前週1.09倍) |
来期予想ROE | 5.79% | (前週 5.78%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.59% | (前週 5.53%) |
10月16日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(RP=リスクプレミアム 6.0%)の日経平均株価(10/16現在)は 23,300円(前週比▲100円)。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.7%→45.5%→47.5%→63.8%→50.0%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、47.2%→55.2%→44.0%→60.9%→51.7%。
全期間50%をキープ。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |