9月11日妥当レンジ 19,800円~21,400円
日経平均24000円を前に模様眺めの展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<菅新首相への期待と欧米の緩慢な経済回復>
■自民党総裁選挙(14日)は、予想通りに菅義偉官房長官が大差で勝利した。菅氏は、16日の首相指名選挙で首相に新指名される。デジタル庁の創設、地銀再編、行政(日銀・財務省・金融庁?)の連携強化、既得権益の排除と規制緩和といった改革推進を抱負として述べており、早晩に決定される閣僚の顔ぶれからその実効性が問われると考えられる。
■ 米国では10日、新型コロナウイルス対策に向けた5000億ドルの追加支援策が上院で否決された。11月の大統領選前の成立は困難との見方も出てきている。7月末には失業給付を週600ドル加算する特別処置が失効、8月上旬には中小企業の給与補填策も申し込み期限が切れ、年内には支給の期限切れる。9月末には航空会社向けの雇用維持策も失効する。「財政の崖」が現実味を帯びてきている。新規失業保険申請数は9/5終了週で88.4万件と前週(88.4万件)からの改善はなかった。
■ 欧州中央銀行は、10日の理事会で20年の成長率を▲8.7%から▲8.0%と上方修正した。ただし、8月の物価上昇率が▲0.2%とマイナス圏に落ち込みデフレ懸念が高まっている。米FRBが積極的な緩和政策を採ることもあり、ユーロ高が進んでおりデフレに拍車をかける構造にある。
■ 停滞が続く欧米とは対照的に中国の回復は顕著である。15日発表の8月の鉱工業生産は+5.6 % ( 7月+4.8% 、市場予想+5.2 % ) 、小売売上高は+0.5 % ( 7 月▲ 1.1 % 、市場予想0.0%)であった。
■ 今週は、日米で金融政策決定会合が予定されており、市場への影響は軽微と思われるものの様子見が広がる可能性もあろう。経済指標では、16日:貿易統計(日本・8月)、米小売売上高(8月)、17日:フィラデルフィア連銀製造業景況指数(9月)、米国新規雇用保険申請数(9/5終了週)、18日:ミシガン大学消費者信頼感指数(9月)、などが注目される。
■ 株式市場は新内閣の政策を先取りした物色が予想されるが、欧米の緩慢な経済回復と沸いては消える金融緩和相場への疑念などからやや方向感のない展開を予想する。11日時点の日経平均の参考値(リスクプレミアム6.0%で算出)は23,300円である。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,800円~21,400円 | (前回19,800円~21,300円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(9月11日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(9月11日)
今期予想EPS | 970.19円 | (前週979.98円) |
来期予想EPS | 1253.16円 | (前週1256.24円) |
再来期予想EPS | 1440.07円 | (前週1443.41円) |
今期予想PER | 24.13倍 | (前週23.68倍) |
来期予想PER | 18.68倍 | (前週18.47倍) |
再来期予想PER | 16.25倍 | (前週16.08倍) |
来期予想PBR | 1.07倍 | (前週1.07倍) |
来期予想ROE | 5.75% | (前週 5.81%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.55% | (前週 5.60%) |
9月11日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
参考値(RP=リスクプレミアム 6.0%)の日経平均株価は 23,300円であり、ほぼ現水準と一致。
当面は参考値を中心に水準を計ってゆくことにする。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.6%→43.3%→44.0%→47.7%→48.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.2%→47.2%→44.7%→47.8%→49.4%。
来期ベースは17週連続、再来期ベースも15週連続で50%割れ。しかし、節目となる50%にはあと一息。株価は下期以降の業績回復期待を積極的に織り込む展開も期待される。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |