8月21日妥当レンジ 19,700円~21,300円
今週はジャクソンホールへの期待感から強含み
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米国のゼロ金利長期継続はドル安リスクもある点に留意>
■先週は、弱い国内経済指標を受けて日本株はやや弱含みに推移したが、米国はハイテク株の好調や新型コロナウイルスに対する治療方法の拡大などからS&P500並びにナスダック総合指数は最高値を更新した。
■7月の貿易統計(19日)において輸出が前年同月比▲19.2%、機械受注統計4-6月においては船舶・電力を除く民需が前期比▲12.9%となり、基調判断を「減少している」に引下げた。
■米国は失業保険新規申請数(9-15日の週:20日発表)が、前週の97.1万件から110.6万件と増加したものの、住宅関係の指標が好調だった。7月の住宅着工件数(18日)は前月比+22.6%、中古住宅販売件数(21日)は同+24.7%だった。
■今週は、国内は目立った指標の発表はない。米国では、コンファレンスボード消費者信頼感指数(8月分・25日)、週間の新規失業保険申請数(8/15週・27日)。24~27日の日程で米共和党の全国大会が開催され、トランプ大統領、ペンス副大統領が大統領選候補として示される。
■今週、最大の注目イベントは、27日に開催される国際経済シンポジウム(=ジャクソンホール会議)でのパウエルFRB議長の基調講演である。19日に発表されたFOMC議事録(7/28-29開催分)において、ゼロ金利政策を長期にわたって維持する政策指針「フォワード・ガイダンス」を導入する考えが示された。早ければ次回のFOMC(9/15-16)において正式に導入される可能性があり、市場はパウエル議長が講演においてどこまで踏み込むかに注目している。物価や失業率を目標値と設定する手法が見込まれるが、「2%を上回る緩やかな過熱状態をつくる」ことが示されれば、株価にインパクトがあるだろう。
■株式市場は、ジャクソンホール会議を視野に、米国株を中心に強含みの展開が予想される。ただし、市場の期待感が強すぎると反動があることには注意が必要である。一方で、ゼロ金利の長期継続はドル安を齎す可能性もあり、(日本の)輸出関連銘柄には逆風となる可能性も留意したい。
■アナリスト・コンセンサス予想EPSには、底打ち感があるものの、(プラス傾向への)反転・回復は緩慢なペースが予想される。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,700円~21,300円 | (前回19,800円~21,400円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月21日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月21日)
今期予想EPS | 993.13円 | (前週985.34円) |
来期予想EPS | 1259.86円 | (前週1271.14円) |
再来期予想EPS | 1443.99円 | (前週1447.92円) |
今期予想PER | 23.08倍 | (前週23.64倍) |
来期予想PER | 18.19倍 | (前週18.32倍) |
再来期予想PER | 15.87倍 | (前週16.08倍) |
来期予想PBR | 1.06倍 | (前週1.07倍) |
来期予想ROE | 5.84% | (前週 5.86%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.66% | (前週 5.63%) |
8月21日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
先週は小幅な調整があったものの、金融緩和継続という基調が変わらないこと、新型コロナの感染ピークは打ったとの見方から底堅い展開が続いている。
今週はジャクソンホール会議でのパウエル議長の基調講演の内容次第では、上方に振れる可能性もあるだろう。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 34.4%→45.0%→44.8%→42.6%→43.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、36.2%→48.9%→48.2%→49.2%→47.2%。
来期ベースは14週連続、再来期ベースも12週連続で50%割れ。底打ち感はあるものの、回復(反転)ペースは弱い。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |