8月14日妥当レンジ 19,800円~21,400円
足もとの経済指標は堅調だが、回復鈍化も指摘される

【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】

投資のポイント 

<「バイデン増税」を次第に織り込む展開か?>
■先週に発表された経済指標は、堅調ながらも回復傾向が鈍化しつつあると言えるような内容だった。11日の景気ウオッチャー調査(7月・日本)は、現状判断DIは前月比2.3ポイント上昇の41.1であったが、先行き判断DIは36.0と8ポイント低下。13日発表の米失業保険新規申請数(2-8日の週)は、96万3千件と前週の改定値から22万8千件減少し、失業保険総受給者数(7/26-1日の週)は1,548万6千人と前週の改定値から60万4千人減少した。14日発表の7月の米小売売上高は前月比+1.2%と前月(+7.5%)から大きく鈍化しただけでなく市場予測(+1.6%)も下回った。8月のミシガン大学消費者信頼感指数は72.8と前月より0.3ポイントの上昇に留まった。日米ともに経済の回復傾向は見られるが、そのペースは緩慢なものに留まっており、特に消費・雇用セクターの弱さが目立っている。
■14日発表の7月の中国統計は、工業生産が前年同月比+4.8%、固定資産投資(1-7月)が▲1.6%(1-6月は▲3.1%)と順調ながらも小売売上高は▲1.1%に留まった。中国の7月の都市部の新規雇用は年初から毎月、前年同月対比で2桁の減少が続いており、また農村部は大雨による長江流域の洪水の影響を受けているようだ。
■さて、11月3日の大統領選を控えて、「バイデン増税」がNY市場では懸念され始めているようだ。バイデン氏は公約として所得税の最高税率を37%→39.6%へ、法人税を21%→28%に引き上げるとともに、キャピタルゲイン課税の引上げる方針だ。年100万ドル超の高所得者に対しては税率を約2倍の39.6%に高める。秋口から本格化する米大統領選挙の動静を視野に攪乱要因となる可能性もあるだろう。
■昨日の夕方のニュースでは、4-6月のGDPがマイナス27.8%(前期比年率換算)となったが事前予想通り。なお、日本経済研究センターが取りまとめている「EPSフォーキャスト」では、20年度(年間)の実質GDP予測は▲5.75%となっている。
■1Q決算を通過して、企業業績に関する悪材料は概ね織り込まれたと見るが、日経平均株価と妥当レンジの乖離が広がった。金融緩和の継続によって乖離は続くと見られるが、現状よりも広がるようであれば調整局面を警戒したい。

 

 

◇日経平均妥当水準(レンジ)

19,800円~21,400 (前回19,600円~21,200円)

*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月14日)来期予想ベースEPSをもとに算出

◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月14日)

今期予想EPS 985.34 (前週1000.37円)
来期予想EPS 1271.14 (前週1264.37円)
再来期予想EPS 1447.92 (前週1453.63円)
今期予想PER 23.64 (前週22.32倍)
来期予想PER 18.32 (前週17.66倍)
再来期予想PER 16.08 (前週15.36倍)
来期予想PBR 1.07 (前週1.03倍)
来期予想ROE 5.86% 前週 5.85%)
来期予想
インプライド・リスク・プレミアム
5.63% (前週 5.75%)

8月14日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出

  

1Q決算を経過してアナリスト・コンセンサスが全般的に引き下げられたことによって、日経平均株価と妥当レンジとの乖離が拡大した。だからと言って、金融緩和が継続されている環境下では、それが直ぐに解消されるということも無いのだろうが、乖離がさらに広がるようであれば調整局面もあるだろう。

来期予想ベースのプラス企業比率は、 36.834.445.044.842.6
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.836.248.948.249.2
来期ベースは13週連続、再来期ベースも11週連続で50%割れではあるが、一旦底打ちといえるところまで来たようだ。

[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]

出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示

 

 

 

「IFIS/TIWコンセンサス225」について
IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。
理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。
4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。
〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕
会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。
〔予想EPS増減社数〕
今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。
〔予想PBR(今期末)〕
前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。
〔予想ROE(来期ベース)〕
前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。
〔リスクプレミアム〕
特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り

 

株式会社ティー・アイ・ダヴリュ
独立系証券リサーチ会社TIWのアナリスト陣が、株式市場における時事・トピックスや業界動向など、取材に基づいたファンダメンタル調査・分析を提供するともに、幅広い視野で捉えた新鮮な情報をお届けします。