8月7日妥当レンジ 19,600円~21,200円
米国「財政の崖」問題の後退から騰勢強まる
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<トランプ大統領が8日に追加対策の大統領令を発動>
■トランプ大統領は8日、追加の経済対策を発動した。1)失業給付を週400ドル上乗せ、2)給与税の納付を猶予、3)学生ローンの返済を猶予、4)住宅の強制立ち退きを一部停止、という内容。歳出の決定権は議会にあることから法定闘争の可能性もあるが、法廷闘争となれば国庫支出が差し止められることから(民主党はそのカードを切ることが難しい)、逆に議会の協議が進展するとの見方もある。
■10日のNY市場は大統領令の発動による「財政の崖」の回避と、新型コロナウイルス向けのワクチンが年内に開発・承認されることにより、経済回復が早まるとの期待により大幅上昇した。日本株もこうした流れを引き継いで騰勢が強まると考えられる。
■今週も4-6月期の決算発表が続くが、日本経済新聞(8/11)によると7日までの開示集計では21/3期の純利益は36%減になる見通しである。4~5月の本決算において通期予想開示を見送った企業が業績予想の開示を行っているが、従前のアナリスト・コンセンサスを下回る傾向が強いように見受けられる。しかし、開示によって悪抜けとなることから、マイナスインパクトは市場全体としては大きくは無い。
■日経夕刊(8/8)の「ウォール街ラウンドアップ」において次のような指摘があった。米国の実質金利は過去最低のマイナス1.08%にあり、FRBは消費者物価上昇率が2%を超えても当面は容認する指針であることから実質金利はマイナス2%にまで低下する。その結果、(金利が+2%以上の状況に比べて)2.5倍高いバリュエーションでも許容する、そのため、さらにPERが切り上がってもおかしくないとの見方が台頭している。また、金(ゴールド)の価格が1トロイオンス2000ドルを突破して過去最高値を記録していることから、通貨の価値が低下しているとの見方も強まっている。こうした点を踏まえると従来の常識とは異なる投資尺度が(少なくともコロナ禍の経済では)適用される可能性が強まっているのかもしれない。
■今週は、14日発表の7月の各種統計が注目される。中国(鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資)、米国(鉱工業生産、小売売上高)。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,600円~21,200円 | (前回19,300円~20,900円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(8月7日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(8月7日)
今期予想EPS | 1000.37円 | (前週1012.23円) |
来期予想EPS | 1264.37円 | (前週1266.89円) |
再来期予想EPS | 1453.63円 | (前週1455.52円) |
今期予想PER | 22.32倍 | (前週21.45倍) |
来期予想PER | 17.66倍 | (前週17.14倍) |
再来期予想PER | 15.36倍 | (前週14.92倍) |
来期予想PBR | 1.03倍 | (前週1.00倍) |
来期予想ROE | 5.85% | (前週 5.86%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.75% | (前週 5.84%) |
8月7日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
通期予想を開示する企業が増えてはいるものの、アナリスト・コンセンサスを下回る傾向が強い。トランプ大統領が追加経済対策に関する大統領令を発動したことから米国の「財政の崖」問題はひとまずは解消されると考えられ、 また1Q決算で悪材料も一旦出尽くしとなるだけに目先の市場は強含みに推移するものと考える。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 42.5%→36.8%→34.4%→45.0%→44.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、49.5%→41.8%→36.2%→48.9%→48.2%。
来期ベースは12週連続、再来期ベースも10週連続で50%割れではあるが、底打ち感が強まっている。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |