7月4日妥当レンジ 19,700円~21,300円
目先は材料出尽くしだが、金融相場は変わらず
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<6月の米国経済指標は好調>
■米中の6月分の経済指標が上向きであることを受けて、先週は日米ともに株式市場は確りした展開であった。中国製造業景気指数は国家統計局(30日)、財新・マークイット(1日)ともに堅調であった。米ISM製造業景気指数(1日)は、前月の43.1から52.6と大きく改善した。ADP雇用統計の非農業部門雇用者数は5月分が大幅に上方修正されたことに加えて、6月も236.9万人の大幅増加となった。2日発表の米雇用統計も失業率が5月の13.3%から11.1%に大きく改善するとともに、雇用者数は480万人の増加となった。週明け発表されたISM非製造業景気指数は、5月の45.4から57.1への急回復となった(市場予想は48.9)。
■ただし、一旦は材料出尽くしとなる可能性もある。今週の経済指標は、日本の家計調査(7日)、景気ウオッチャー調査(8日)の発表くらいでめぼしいものは見当たらない。そうした中では、米国での感染再拡大による経済再開の動きの停止、中国の「香港国家安全維持法」成立を受けた米国の対応、日米欧の雇用支援策の期限切れや新興国経済や企業債務などの構造的問題に市場の視線が向かうことも考えられる。
■30日の「香港国家安全維持法」成立の前後からの米国の動きは、香港に認めていた軍民両用技術を輸出する際の優遇処置の取りやめ(29日)、米連邦通信委員会がファーウェイ、ZTEを安全保障上の脅威と正式認定(30日)。「香港自治法案(香港の自治侵害に関わった中国共産党員や金融機関への制裁を可能にする)」の可決(下院1日・上院2日)。「香港自治法案」はトランプ大統領の署名に注目が集まるが、トランプ氏が署名も拒否権も行使しない場合でも10日後に成立する。
■米大統領選挙は、民主党のバイデン氏がトランプ大統領を10ポイントをリードする展開が続いている。打ち手が裏目になりがちなトランプ氏が何らかの強行策に打って出る可能性がまだあることには留意したい。
■アナリストコンセンサス予想の下方トレンドは緩やかになっており、底打ちが近いと考えられる。そのため、株価水準には割高感があっても強含みの展開を予想する。ただし、金融相場であることは常に意識しておきたい。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,700円~21,300円 | (前回19,900円~21,500円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(7月4日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(7月4日)
今期予想EPS | 1034.36円 | (前週1030.31円) |
来期予想EPS | 1280.78円 | (前週1286.76円) |
再来期予想EPS | 1464.88円 | (前週1465.49円) |
今期予想PER | 21.57倍 | (前週21.85倍) |
来期予想PER | 17.42倍 | (前週17.50倍) |
再来期予想PER | 15.23倍 | (前週15.36倍) |
来期予想PBR | 1.03倍 | (前週1.05倍) |
来期予想ROE | 5.93% | (前週 6.01%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
5.82% | (前週 5.88%) |
7月4日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
コンセンサス予想EPSのダウントレンドは緩やかになりつつあるが、割高感は解消されてはいない。短期的には経済再開を受けた米国指標の改善を受けた強含みのトレンドであるが、新型コロナの感染再拡大を睨む展開。しかし、PBR1.0倍(21,044円)の水準がやや上がっており、下値サポートは強い。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 31.0%→30.5%→29.2%→37.6%→41.9%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、41.5%→37.9%→42.7%→46.5%→45.5%。
来期ベースは7週連続、再来期ベースも5週連続で50%割れであるが、水準が切りあがりつつある。
[注:例年4~5月は、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |