2月28日妥当レンジ 19,400円~21,000円
中国国外の感染状況を睨みつつ底値を模索する展開
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<中国国外での新型コロナの感染状況を注視>
■米ダウ工業株30種平均は、先週1週間で3,500ドル以上の下落となった。ただし、週明けの2日は1,294ドル上昇した。28日に米FRBのパウエル議長が「我々は政策ツールを用いて、経済を支えるために適切な行動をするだろう」と利下げに含みを持たせる発言を行ったことや、2日に「潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めてゆく」とする日銀の黒田総裁の談話が伝えられたことなどから、市場に安堵感が広がったことによる。
■しかしながら、今後の市場動向には楽観は禁物である。引き続き、新型コロナウイルスの感染状況を注視する展開が見込まれる。中国国内の感染者数は湖北省を除けばほぼ収束しつつあり、生産再開が進みつつある。他方で、中国国外の感染者数が急拡大しており、感染者数8,774人、死者数128人(WHO・2日)となっている。これは1月29日前後の中国の状況と酷似しており、急激に拡大するリスクも考えられる。
■日本国内での小・中・高の学校休校もその一つであるが、感染防止のための経済活動の抑制が図られることで、世界経済の減速感が強まることが予想される。
■2日発表の米ISM製造業PMI(2月)は50.1と大きな落ち込みはなかったが、まだ新型コロナウイルスの影響を殆ど織り込んではいないと考えられる。中国製造業PMI(2月・国家統計局・2月29日発表)が前月の50.0から35.7へ急落したようなインパクトが中国以外の国にも広がるようであれば、日経平均株価PBR1.0倍=約20,700円の防衛も難しい可能性はある。
■経済減速、企業業績の悪化が見込まれる中では、市場の反発も限定的と考えられるだけに、中国の復調に向けた次の展開に備えつつも、動静を注意深く見守りたい。
<「コンセンサスDI」は全期間で4週連続50%割れ>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間で予想EPSが前週比マイナスとなった。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)は4週連続で全期間で50%割れ。マイナストレンドはまだ続きそうである。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
19,400円~21,000円 | (前回20,800円~22,600円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(2月28日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(2月28日)
今期予想EPS | 1225.98円 | (前週1257.14円) |
来期予想EPS | 1366.82円 | (前週1387.93円) |
再来期予想EPS | 1492.79円 | (前週1511.04円) |
今期予想PER | 17.25倍 | (前週18.60倍) |
来期予想PER | 15.47倍 | (前週16.85倍) |
再来期予想PER | 14.16倍 | (前週15.48倍) |
来期予想PBR | 0.99倍 | (前週1.09倍) |
来期予想ROE | 6.37% | (前週 6.47%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.56% | (前週 6.32%) |
2月28日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
妥当レンジも大幅に下方シフト。今後もコンセンサス予想EPSの減少によって妥当レンジの下方トレンドは続くが、PBR1倍水準での下落への抵抗が強まることも予想される。ただし、業績悪化で上方にも硬直性が強まることから20,700円~22,000円くらいの間でのボックス圏に入ると予想する。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 45.3%→44.3%→45.7%→34.4%→41.8%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、51.8%→44.0%→43.3%→39.7%→47.3%。
4週連続で全期間50%割れ!!
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |