1月31日妥当レンジ 20,900円~22,600円
今後の感染拡大にもよるが、緩和期待が台頭する可能性
【「IFIS/TIWコンセンサス225」によるマーケットの妥当レンジの推計】
投資のポイント
<米景気への影響は緩和期待を高めるが>
■新型コロナウイルスによる肺炎の患者数は中国本土で2万人を超え、死者も425人となった(4日午前1時)。感染の広がるペースや致死率には衰えが見えない状況だ。中国本土以外の感染者は大きく広がっていないことが救いであるものの、感染防止のために春節の休暇終了後も休業延長が取られる他、世界的に中国からの入国を制限するなど、中国経済には深刻な影響が予想され、世界経済にも波及するものと考えられる。
■1月30日に米商務省が発表した19年10-12月期の実質GDP(速報)は、前期比年率換算で+2.1%と市場予想(+1.8%)を上回ったが、個人消費は+1.8%に減速(前期は+3.2%)、設備投資は▲1.5%と3四半期連続のマイナスとなった。GDPを押し上げたのは、輸入が▲8.7%と減少したことで純輸出が大きく改善したことによるものであり、この要因を除外すれば実質成長率は0.6%に留まるとの試算もある。3日に発表された1月のISM製造業景況指数は50.9と前月(47.8)を大きく上回ったが、まだ新型コロナウイルスの影響を織り込んでいない点には留意が必要だ。今週は、5日:ADP雇用統計・ISM非製造業PMI、7日:米雇用統計の発表が予定されている。
■新型肺炎の影響を織り込んだ経済指標の発表は、2月下旬以降に発表されるものからになると考えられるが、その時点での感染の広がり等によっても大きく異なるが、中国国内に封じ込めることが出来れば、主要中央銀行の追加緩和期待と各国政府の景気対策等によって反転の機会を窺う展開も予想される。いずれにしても新型肺炎の感染の状況から当分は目が離せないだろう。
<「コンセンサスDI」は再来期ベースが50%を上回る>
■「IFIS/TIWコンセンサス225」(アナリストコンセンサス予想EPSを225型に集計)は、全期間で前週比プラスとなった。12月決算企業において対象決算期の移行の影響もあったが、KDDI(9433)、中外製薬(4519)、エーザイ(4523)などが寄与した。「コンセンサスDI」(前週比プラスになった企業の比率)でも再来期は50%を超えた。ただし、まだ新型肺炎の来期業績への影響を織り込んではいないと考えられ、引き続き注意が必要と思われる。
◇日経平均妥当水準(レンジ)
20,900円~22,600円 | (前回21,200円~22,900円) |
*「IFIS/TIWコンセンサス225」(1月31日)来期予想ベースEPSをもとに算出
◇IFIS/TIWコンセンサス225(1月31日)
今期予想EPS | 1252.35円 | (前週1250.19円) |
来期予想EPS | 1379.89円 | (前週1376.96円) |
再来期予想EPS | 1506.37円 | (前週1501.45円) |
今期予想PER | 18.53倍 | (前週19.06倍) |
来期予想PER | 16.82倍 | (前週17.30倍) |
再来期予想PER | 15.40倍 | (前週15.87倍) |
来期予想PBR | 1.10倍 | (前週1.13倍) |
来期予想ROE | 6.53% | (前週 6.52%) |
来期予想 インプライド・リスク・プレミアム |
6.37% | (前週 6.26%) |
1月31日 日経平均終値より、PER、PBR、ROE等を算出
まだ妥当レンジよりは割高な水準。来期見通しの変更はこれからであり、妥当レンジも一段と下方にシフトすると思われる。
来期予想ベースのプラス企業比率は、 48.4%→57.7%→45.3%→42.2%→45.3%。
再来期予想ベースのプラス企業比率は、45.9%→54.7%→42.7%→46.2%→51.8%。
再来期は50%台に浮上したが(持続性はあるのか?)
[注:4~5月は例年、対象決算期変更の影響があるのでイレギュラーな値になることに留意]
出所:IFISコンセンサスを基にTIW作成
いずれも2014年1月から表示
「IFIS/TIWコンセンサス225」について IFIS/TIWコンセンサス225」は、株式会社アイフィスジャパンが集計しているアナリストコンセンサス・データ等を原データとして、2009年4月より株式会社ティー・アイ・ダヴリュが東証株価指数(日経225)に対応するように構成銘柄のEPSを算出・集計したものである。今期予想EPS、来期予想EPSの変化を追うことによって、マーケット全体の業績見通しを確認する。 理論上では株価は、自己資本配当率(ROEと配当性向の積)、EPS成長率、無リスク証券の利回り(国債利回り)、リスクプレミアムの4要素で決定される。株価をこれら構成要素に分解することによって、株価変動の要因について考察するとともにファンダメンタルからの妥当な株価(マーケット)水準を思量する。なお、リスクプレミアムを正確に計測することは、一定期間を経た後でないと困難なことであることから、当レポートではインプライド・リスクプレミアム(株価と他の構成要素からの逆算値)を使用している。 4つの構成要素の内、株価の短期的な変動に最も影響を与えるのがリスクプレミアムである。リスクプレミアムは、無リスク証券の金利に対して投資家が要求する上乗せ金利と定義されるが、投資家心理(マーケットセンチメント)、他の投資対象(金融商品)との利回り格差の変動などによって変化する。長期的な見通しの変化が無い中では、インプライド・リスクプレミアムは一定のレンジ内で推移する傾向にある。日経平均株価の妥当水準を算出には、インプライド・リスクプレミアムの一定レンジからの逆算によって行っている。 〔今期予想ベースEPS、来期ベースEPSにおける“今期”、“来期”の取扱い〕 会計上の業績計測期間ではなく、本決算発表を基準とする。例えば、2011年4月30日現在では、2011年3月期は決算発表前であれば今期、決算発表が行われていれば前期、となる。 〔予想EPS増減社数〕 今期ベースならびに来期ベースを示している。週間(週末値)のデータを基に、前週末に比べてEPSが増加・変化無し・減少した企業の数。 〔予想PBR(今期末)〕 前期末BPS(1株純資産)に今期予想EPSを加えて、予想DPS(1株配当)を控除した値(=予想BPS)で株価を除した数値。中間配当は考慮していない。 〔予想ROE(来期ベース)〕 前述の予想BPSで来期予想EPSを除した値。 〔リスクプレミアム〕 特に断りの無い限りインプライド・リスクプレミアムを表す。計算式は、{ 1-予想配当性向×(1-予想B/Pレシオ)}×予想ROE-無リスク証券利回り |